ニッケル工場売却 ストや道路封鎖も 80年代の独立運動ほうふつ【ニューカレドニア】


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車両などによって封鎖された道路=ニューカレドニア

 12月初旬、ニューカレドニア南部にあるブラジルの大手鉄鋼会社ヴァレが所有する、ニッケル精錬工場の売却に関する会議が行われた。売り手と買い手、当局代表、議会代表、ニューカレドニア独立派の「南部工場国営推進化グループ」など関係者が参加したが、売却内容の合意後に解釈の違いが明らかになった。合意は覆され、売却先が変更された。交渉は決裂し、同グループがストライキを予告した。

 1864年にニッケル鉱石が発見されて以来、ニューカレドニアは世界的なニッケル生産地となった。2016年時点のニッケル鉱石生産量は世界第5位、埋蔵量は第4位(670万トン)と言われている。ニッケル産業はニューカレドニアの基幹産業で、太平洋屈指の高い生活レベルもニッケルのおかげだ。

 北部に建設された工場に対して、南部には最新の技術を持つ世界屈指の工場がある。しかし技術的な問題で開業時から工場がフル操業できていない。南部工場で働く人は約3千人。ニューカレドニアでは多くの人が何らかの形でニッケル産業と関係を持つ。

 12月7日、ヌメア市民は街を封鎖するバリケードや、燃え上がるタイヤの前で暴徒化する独立派の姿を目にした。封鎖されたのは首都・ヌメアだけではなく、ニューカレドニア全土の主要道路に及んだ。同日の夜、工場の新たな買い手となっていた、韓国の鉄鋼会社Korea Zincが辞退したため、南部工場国営推進化グループのストライキが激化した。道路の封鎖が続き、操業鉱山12カ所のうち9カ所が混乱に陥り、市民生活がまひした。

 この状況を見た市民が思い起こしたのが、80年代の独立騒動だった。工場売買に関するストライキは独立問題を巻き込み、ストライキの限界を超えた。独立派は軍隊の警備を突破して南部工場に入り、一部を放火した。独立派の一部は暴走して、先住民族議会の説得にも耳を貸さなかった。

 憤激する市民は各地で行動を起こした。道路を封鎖する独立派の反対側で、フランス国旗を掲げて居座る市民もいた。ヌメア以外でも、市民を集めて本国の介入を求める市長などの姿が見られた。

 12月10日の新聞にはヌメア市長のソニア・ラガルド氏が1面広告で、クリスマスの行事を取りやめるという厳しい選択を伝達した。被害者の救済と安全確保のためだ。ニューカレドニアの12月は夏休みの始まりで、クリスマスの時期でもある。例年なら街が活気にあふれる季節だ。今年は新型コロナウイルスの影響で、どこも行けない閉塞(へいそく)感がある上に、不穏な空気が国を覆っている。

 (山田由美子ニューカレドニア通信員)