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県人ネットワーク 順天堂大学医学部名誉教授 山城 雄一郎さん(78) 東京都在住  子どもの幸せのために


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順天堂大学小児科教授退任後も、特任教授として教べんを執り、研究を続ける山城雄一郎さん

 「苦しむ子どもを救いたい」。その一心で人の何倍も努力を重ねてきた。順天堂大小児科教授を退任し78歳となった現在も、特任教授として教壇に立ち、外来もこなす傍ら、民間企業とともに腸内細菌の研究を続けている。

 満州で終戦を迎え、母親と弟と3人で、逃げるように沖縄に戻った。ソ連に抑留された父親は少し遅れて帰郷した。父興雄さんも医師だった。患者が苦しんでいると、夜中でも往診に向かう父の背中を見て育った。「自分も父のように人を助けたい」。医師の道を志すことを決めた。

 専門は小児消化器病、栄養学、プロバイオティクス。日本小児科学会副会長や同東京都地方会会長、日本小児科栄養消化器肝臓学会運営委員長など数々の役職を務め、国内外の医療雑誌への論文掲載も多く、査読も行うなどその道をけん引してきた。

 海外との交流も進めてきた。特に医療環境が整っていないアジア地域の医師の受け入れと教育に力を入れてきた。アジア小児医学研究学会議やアジア汎太平洋小児栄養消化器病学会などを創設、会長などの役職を務めた。2018年、同会議から生涯貢献賞が贈られた。

 「アジアでは、下痢や栄養不良などによる病気で子どもが命を失っている。そういった子どもたちを救うには、医師を育てないといけない」。言葉には子どもたちの幸せを強く願う思いがにじむ。難病の子どもたちを支援する活動にも30年以上関わる。

 現在、ヤクルトと共同で、ビフィズス菌など腸内細菌が体に及ぼす影響を研究している。故郷沖縄の子どもたちの健康について危惧する。県立南部医療センター・こども医療センターの医師と共同で未熟児医療に関する論文を作成するなど支援を続ける。

 「私自身は特別に能力が優れていることなく人並みだが、現在まで学術研究を続けてこられたのは、一にも二にも人一倍の努力だ」と語る。強い信念の下、現状に満足せず、常に高い目標を目指して努力を続ける姿勢を今も持ち続けている。

 やましろ・ゆういちろう 1942年1月、熊本県生まれ。東京都在住。那覇高校卒業後、1967年に順天堂大医学部卒業、72年同大大学院修了(医学博士)。84年に順天堂大学小児科助教授、97年に同大教授就任。2007年3月退任、同4月から名誉教授、プロバイオティクス研究講座特任教授。