【記者解説】沖縄県の国際物流ハブ新戦略 その狙いと背景は


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 県が国際旅客便を使った貨物輸送強化を目指すのは、事業の伸長に頭打ち感があった「国際物流ハブ事業」を前に進めるためと言える。県は、東アジアの大都市と空路で4時間以内にある沖縄の地の利を生かした物流ハブを、県経済発展の起爆剤と位置付ける。だが近年は格安航空会社(LCC)の台頭もあり航空会社間や他空港との競合により、取り扱い貨物量は減少する。今回の事業の再構築で課題解決を図る考えだ。 (池田哲平)

 沖縄地区税関の資料によると、2019年の那覇空港の貨物総取扱量は前年比17・4%減の10万4830トンで、3年連続減少した。24時間稼働の那覇空港の優位性を生かし、配達の速度を売り物にしてきたが、羽田など他空港の貨物の取り扱い強化なども進み、競争が激化していた。

 旅客便を使った貨物輸送の方向性について、県は「沖縄経由の貨物を増やす方向性は変わらない」と強調する。コロナ禍の前に、那覇空港は海外15都市15路線、国内30都市32路線で航空機が就航。県は従来の配達スピードだけではなく、旅客便の活用によって、貨物を運べる路線を増やす「ネットワークを広げる」(県幹部)方向性へとかじを切る考えだ。ただ、貨物取扱量の大幅な増加に向けては、沖縄発の輸出品を増やすことも必要となり、県内への企業誘致も引き続き鍵となる。さらに海外航空会社との提携の仕組みづくりも検討が必要となる。県は検討作業を急ピッチで進める。

 県は貨物路線のネットワークを広げることは、安定的に貨物を運べる体制を整えることにもつながると捉える。感染症拡大で取り扱い貨物量は減少しているものの、沖縄が持つ地理的優位性は変わっていない。事業の再構築によって中国14億人、東南アジア諸国連合(ASEAN)6億人の計20億人の巨大市場を取り込み、物流ハブとしての沖縄の真価を発揮できるのかが問われている。