未来の琉球芸能の担い手育成を図る第5回おきなわ伝統芸能「若衆芸術祭」(琉球新報社、沖縄芸能連盟主催)が19、20の両日、那覇市の琉球新報ホールで開催された。小中学生140人が出場し、日ごろの研さんの成果を大舞台で披露した。表彰式は1月11日午前11時から琉球新報ホールで開かれる。
■県知事賞
宮良美紅 悔しさ胸に努力
音楽部門・県知事賞は、「かぎやで風節」を歌った琉球古典音楽野村流音楽協会内間安勇研究所の宮良美紅(コザ中1年)が受賞した。内間は「昨年、同賞を逃した悔しさをバネに、努力したことが報われたと思う」と快挙をたたえた。
研究所の発表会のほか、コロナ禍以前は老人ホームへの慰問ボランティアを通して、数多くの舞台を踏んできた。宮良は「おじいちゃんやおばあちゃんが喜んでくれることがうれしく、私も元気が出る」。他者の笑顔を自らの力に変え、成長してきた宮良は本番の舞台、独唱1番手のプレッシャーを感じさせず、堂々とした歌声を響かせた。「みんなの心に響くような歌を目指したい」と成長を誓った。
仲村渠愛 才気あふれる舞
舞踊部門・県知事賞の阿波連本流啓扇紅節の会伊志嶺忍琉舞研究所の仲村渠愛(坂田小5年)は「貫花」を踊った。微笑をたたえて堂々と軽やかに舞う姿が、天性の才能を感じさせた。
2歳から道場に通う仲村渠は「踊っていると楽しくて仕方がない」と笑う。伊志嶺は「楽しむことが一番大切だ。その上で、気持ちを込めて踊るよう指導している」と声をそろえ、「熱心で、毎日稽古に取り組んでいる」と弟子の努力にも太鼓判を押す。
コンクール新人賞受験に向け「歌詞の意味の理解を深めて、もっとうまく踊れるようになりたい」と意気込む。「沖縄で大切に受け継がれているものを教わっていることが誇らしい」と舞踊愛をほとばしらせた。
■県教育長賞
川田結稀 「芸能の道」一途に
音楽部門の県教育長賞は、「恩納節」を演奏した琉球古典音楽安冨祖流絃聲会平良大研究所の川田結稀(松川小4年)が受賞した。「琉球新報ホールで独唱できてうれしかった。三線の楽しいところが好き」と言葉にあどけなさがあるが、芸能に向き合う姿勢は大人顔負けだ。
3歳から民謡を習い、お琴、琉舞、古典音楽を稽古し、琉球芸能に親しんできた。平良は「流派ごとに異なる節回しも歌い分けられる。芸能の芯を自分の中に作り、人に伝えられるようになってほしい」と成長に期待した。
仲西ここ乃 ひたむきさ結実
舞踊部門・県教育長賞は、目元涼やかにキレのある踊りをみせた玉城流いずみ会又吉靜枝・聖子琉舞道場の仲西ここ乃(沖尚中2年)が選ばれた。靜枝は「見た目はおとなしいが、はきはきしていてまじめ。そして何より踊りが大好き」と評する。
仲西は放課後間もない5時すぎから、8時すぎまで道場で過ごす。「新しい踊りを習ったり、衣装の着付けを覚えたり、楽しく、新鮮な気持ちでいられる、居心地の良い場所」と“道場愛”を語る。「新人賞、優秀賞と受賞を重ねて、精進したい」と話した。
■琉球新報賞
石川友菜 弱点克服し躍進
音楽部門の琉球新報賞は琉球古典音楽野村流音楽協会吉元博昌研究所の石川友菜(大宮中1年)が手にした。幼いころから祖母の影響で箏曲や琉球古典舞踊をたしなみ、小学3年生で吉元に師事した。吉元が「音感が良く、歌い方を指摘するとしっかり直してくる」と言うように、三線の音に乗った音高で、のびやかな歌声を聞かせた。
高音の発声や三線の弾き方など、自身の弱点を吉元の指導に従い克服し、賞を勝ち取った。「さらに稽古に励みたい」と勢いに乗る。
伊江祐里菜 成長の舞、堂々と
舞踊部門の琉球新報賞は柳清本流紋園好枝乃会渡慶次葉末子琉舞研究所の伊江祐里菜(城西小5年)が選ばれた。最終日最後の演目で緊張の糸を切らさず「日頃から先生に習った目線や歩み、座り方などに注意して踊った」と話す。
渡慶次は「静かだが、いつもにこにこと、朗らかな子。指導したことを素直に受け入れる」と、弟子の成長の早さを分析する。
小学1年から姉の影響で舞踊を始めた。「コンクールで良い点数が取れるよう稽古に励みたい」と意気込む。
■若衆大賞
【音楽】新垣結彩(琉球古典音楽野村流音楽協会糸数くるみ研究所、伊波中1年)「かぎやで風節」
【舞踊】吉田生陽(玉城流琉花の会吉田琉舞太鼓道場、金武中2年)「上り口説」
■選考委員長賞
幸太鼓の会(岡本蓮スレンドラドゥイパ、仲宗根志音、比嘉美和、桃原奈津也、伊覇心人、照屋友唯、津波古佳凜)器楽合奏「加那よー天川」
■若衆優秀賞
【音楽・個人】
▽古波蔵雅(琉球古典音楽野村流音楽協会照屋早月研究所)「かぎやで風節」
▽儀保裕珠葉(琉球古典音楽野村流音楽協会糸数くるみ研究所)「かぎやで風節」
【音楽・団体】
▽幸太鼓の会 吉田琉舞太鼓道場(吉田日陽、吉田生陽、藤城琴葉)「器楽合奏・鳩間節」
▽琉球古典音楽野村流音楽協会(久場妃莉、ハーディー愛梨、仲間惺奏、竹中理悠、宮良美紅、又吉采也、古波蔵雅、石川友菜、宮城汰成、末吉元気、儀保裕珠葉、末吉心曖、宮城琴羽、仲田裕茄、兼城愛佳、玉城心愛、岸本かのん、岸本らなん、上運天絢莉、新垣結彩、八武崎羽美、湧川麗彩、伊佐夏希)琉球古典音楽斉唱「かぎやで風節・恩納節・辺野喜節」
▽琉球古典音楽野村流音楽協会(湧川麗彩、仲田裕茄、兼城愛佳、兼謝名百花、伊佐渚紗)琉球舞踊地謡「上り口説」
▽琉球古典音楽野村流音楽協会(宮城琴羽、岸本かのん、岸本らなん、伊佐夏希)琉球舞踊地謡「秋の踊り」
【舞踊・個人】
▽比嘉斗夢(親泊本流親扇照志野の会親泊ナミ琉舞研究所)「湊くり節」
▽幸地葵(親泊本流親扇照志野の会親泊ナミ琉舞研究所)「湊くり節」
▽諸見里咲花(安座間本流大北喜羽の会神谷みつ子琉舞研究所)「上り口説」
▽與那覇紗帆(安座間本流大北喜羽の会神谷みつ子琉舞研究所)「上り口説」
▽遠藤志枝莉(阿波連本流啓扇会仲嶺麗子・絵里奈琉舞研究所)「上り口説」
▽宮里実玖(玉城流琉花の会吉田琉舞太鼓道場)「上り口説」
【舞踊・団体】
▽玉城流琉花の会吉田琉舞太鼓道場(新里沙穂乃、宮里実玖、吉田生陽)「上り口説」
▽安座間本流大北喜羽の会神谷みつ子琉舞研究所(松田すず、與那覇紗帆、又吉悠雅、松田小桜、諸見里咲花)「上り口説」
▽親泊本流親扇照志野の会親泊ナミ琉舞研究所(比嘉斗夢、幸地葵、座間味優)「湊くり節」
▽阿波連本流啓扇会仲宗根ルミ子琉舞研究所、仲嶺麗子・絵里奈琉舞研究所(國吉優愛、遠藤志枝莉、與那嶺陽向)「上り口説」
▽玉城流いずみ会又吉靜枝・聖子琉舞道場(阿波根拓実、又吉綾音、仲西ここ乃)「麾」
▽玉城流冠千会伊佐幸子・玉那覇ロミナ琉舞道場、柳清本流紋園好枝乃会渡慶次葉末子琉舞研究所(川田結稀、伊江祐里菜、仲嶺燦里)「前の浜」
▽阿波連本流啓扇紅節の会伊志嶺忍琉舞研究所(生盛詩乃、仲村渠愛、仲村南花)「貫花」
▽玉城流扇寿会谷田嘉子・金城美枝子琉舞道場、玉城流扇寿妙の会比嘉美好琉舞道場(天久美空、仲宗根咲帆、平敷一華、国場遥香)「湊くり節」
▽安座間本流大北満之会山城亜矢乃琉舞研究所(喜友名里咲、大城珠那、糸数莉衣愛、平田姫菜、高橋和香奈)「ゼイ」
▽玉城流玉扇福珠会玉城靜江琉舞道場、玉城流玉扇会大田礼子琉舞道場(国吉泰輝、赤嶺佑果、仲座トレラ、當眞穂月)「上り口説」
▽阿波連本流啓扇紅節の会屋比久節子琉舞研究所(島仲紗妃、手登根湊奈、仲村凜)「秋の踊り」
▽安座間本流大北満之会新垣満子琉舞研究所(山城寅旦、大城千那、新里美友)「かぎやで風」
※注:八武崎羽美の「崎」は、「大」が「立」の下の横棒なし
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<協賛>
大光鉱山、琉球芸能奉納団、本願寺派城徳寺、沖縄芸能連盟会長安里ヒロ子、琉球古典音楽野村流音楽協会師範宮城澄雄、久保田照子チャームスクール
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<賛助出演>
舞踊(阿波連本流啓扇南風の会砂川美鈴琉舞研究所・中村和、堀毛ゆきの、大城日菜、野原愛美/玉城流綾美会内間勝美琉舞道場・宮良美紅、島袋桃香)、太鼓(幸太鼓の会吉田琉舞太鼓道場・吉田生陽、吉田日陽/幸太鼓の会儀保明美研究所・伊覇心人)