大みそかの31日に東京・大田区総合体育館で行われた世界ボクシング機構(WBO)アジアパシフィックバンタム級タイトルマッチで、王者のストロング小林佑樹(29)=六島=をKOで倒した比嘉大吾(25)=宮古工高出―Ambition=。5回45秒に右アッパーの連打で小林をマットに沈めた。新王者となった比嘉は「世界チャンピオンになる」と世界王座への野心をたぎらせている。
試合終了のゴングを聞くやいなや、比嘉はコーナーポストに駈け出した。
「よっしゃー」。ポストによじ登り、自身の入場テーマ曲とする怪獣映画「ゴジラ」のワンシーンを彷彿とさせる咆哮を上げる。その姿には、フライ級でKOの山を築き、世界の頂点に上り詰めた往時の輝きが戻っていた。
「1ラウンドから攻めようと思っていた」。言葉通りのロケットスタートだった。序盤から強打を繰り出し打ち合いを挑んでくる小林を圧倒した。相手のガードをこじ開けるようにフックやアッパー、ストレートを連打。小林が打ち返そうと踏み込めば、強烈な左ボディーをたたき込み出鼻をくじく。野性的な攻撃に老獪な攻めも織り交ぜた。
試合後、「いい形で倒せてよかった」と満足げに振り返った比嘉。3人のジャッジが全ての回で比嘉に軍配を上げた点からも、試合の主導権を握り続けていたことは明白だった。
2018年、減量失敗による王者剥奪という挫折を味わった。復帰から3戦目での戴冠だったが、順風満帆な道のりではなかった。
20年10月の2戦目は消極的な試合運びで引き分けに終わった。「前回の試合だけじゃない。復帰してボクシングに身が入ったり入らなかったりした。これだったらだめだな、という面もあった」。コロナ禍という悪条件も重なり、本来のスタイルを見失いそうになる中で迎えた大一番で真価を発揮した。確信に満ちた表情で、「フライ級の時みたいに攻めて倒しに行くスタイルでいきたい。ファンのみんなに楽しんでもらいたい」と力を込めた。
「もう一度世界を目指す」。視線の先にあるのはバンタム級の頂点だ。