次期沖縄振興計画、めざすは「環境配慮」「SDGs」 子どもの貧困にも対応


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沖縄振興の起爆剤となることが期待される那覇空港第2滑走路=2019年9月(沖縄総合事務局提供)

 今年は1972年の沖縄の日本復帰から49年目となる。復帰50年の節目を控え、10年ごとに期限を迎える新たな沖縄振興計画に向けた議論が本格化している。沖縄振興は復帰時からどう変わり、これからどこへ向かうのか。これまでの実績や今後の展望などをまとめた。(梅田正覚)

 県は沖縄の特殊事情から生じる政策課題がいまだに解消されていないとして、2022年度以降も沖縄振興特別措置法(沖振法)の継続を求め、次期沖縄振興計画(振計)の策定へ向けた作業を進めている。キーワードは「国連の持続可能な開発目標(SDGs)」だ。次期振計では「環境への配慮」を新たな柱の一つに位置付ける方針だ。環境への負荷が重い従来の観光客数を追い求める観光施策を転換し、富裕層をはじめとした、さまざまな客層へ向けた観光政策を展開する方針だ。沖縄の地理的優位性を生かして台頭するアジア市場を取り込み、日本経済再生のけん引役を目指す。

 昨年3月に那覇空港の第2滑走路が供用開始となったが、新型コロナウイルスの感染拡大で国際線が全便運休するなど、県内観光業は大打撃を受けた。この事態を教訓として、誘客マーケットの多様化やデジタル技術を活用して暮らしやビジネスの変革を進める「デジタルトランスフォーメーション(DX)」化を促進する。鍵を握るのは沖縄科学技術大学院大学(OIST)だ。規制緩和を図り、OISTを軸として周辺にスタートアップ企業を集積させ、技術革新が生まれる環境構築を狙う。

 返還が決まる那覇港湾施設(那覇軍港)や普天間飛行場の跡地利用も重要視されている。那覇軍港跡地には国際物流拠点の形成構想がある。ここ数年で重要性が増した「子どもの貧困解消」や「首里城の復元」「人口減少対策」なども引き続き対応する。

 県は沖縄振興の主要政策「高率補助」や「沖縄振興開発金融公庫」「内閣府による一括計上方式」「一括交付金」制度の維持を求めている。

 県は昨年11月に次期振計の制度提言(中間報告)を発表した。「沖縄らしいSDGs推進特区」の創設など計118の制度の新設や継続を掲げた。次期振計の骨子案は1月中に公表する。3月末までには素案を作成し、21年度から県振興審議会に諮問する。審議会の答申は今年12月の予定だ。政府は答申の前に沖振法の延長の可否を示すとみられる。

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