【まとめ】対中国シフト、リスク増す沖縄 米軍と自衛隊の一体化進む


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 2021年、米軍は中国の軍事力増強を踏まえ、新たな部隊編成など改めて軍事拠点として沖縄の機能を強めようとしている。訓練の激化による県民の被害や有事に沖縄が巻き込まれる危険性が増している。県が有識者を集めて設置した「米軍基地問題に関する万国津梁(しんりょう)会議」は、中国の脅威を理由に沖縄の基地を固定化しようとする言説に反論すべく話し合いを重ねている。(明真南斗、知念征尚)

米海兵隊員と陸上自衛隊の水陸機動団が連携して行われた共同訓練=2020年2月9日、金武町の金武ブルービーチ訓練場(又吉康秀撮影)

離島でも、宇宙でも連携

 中国の軍備拡張に対抗し、米軍と自衛隊の一体化が進んでいる。2020年1~2月に金武町の米軍ブルービーチ訓練場や沖縄近海で行われた日米共同訓練には離島防衛を担う陸上自衛隊の水陸機動団が県内での訓練として初めて参加。米海軍の揚陸艦に乗り、ボートを使った上陸訓練などを実施した。10月には鹿児島県十島村の無人島・臥蛇島で自衛隊と米軍が離島防衛訓練を行い、共同作戦の能力向上を進める。

 南西防衛を目的とした奄美大島や先島諸島への陸上自衛隊配備は、中国を第一列島線の内側に封じ込めたい米軍の思惑とも合致する。米軍基地負担の軽減が進展しない中、これらの自衛隊基地が米軍との共同使用などを通じて負担強化につながる懸念もある。

 20年5月に発足した航空自衛隊の宇宙作戦隊は、米宇宙軍と連携を進める意向だ。空自は米バンデンバーグ空軍基地にある宇宙領域の多国間調整所へ航空自衛官1人を派遣している。

 空自宇宙作戦隊長の阿式俊英二等空佐は昨年12月、記者団の取材に「米軍はグローバルな(衛星監視の)センサーネットワークを有している。その中で、わが国周辺をセンサーで監視し、(米側と)情報共有するといった協力をしていきたい」と述べた。防衛政策で重要度が増す「新領域」でも一体化が加速している。

高機動ミサイル砲システム「HIMARS(ハイマース)」=2020年2月9日、金武町の金武ブルービーチ訓練場

米、在沖基地重視し新組織

 米軍が中国に対抗するための新戦略構想や組織改編を進める中で、在沖基地を改めて重視することが懸念されている。2020年は米軍牧港補給地区(浦添市)に日本国内で初めて宇宙軍の部隊を発足させるなど、部隊新設の動きも出てきた。海兵隊は組織編成の一環として、小規模で即応力のある「海兵沿岸連隊」の沖縄配備も検討している。
 海兵隊は離島などに給油や攻撃の拠点を設けて対応する作戦構想「EABO」を試行している。小規模な拠点の柔軟な運用が想定されるため、在沖米軍基地の縮小につながるとの見方もある。

 一方、海兵隊はEABO確立に向けた拠点として沖縄を活用しようとしている。県内各地で垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを飛行させ、ヘリコプターや固定翼機からのパラシュート降下訓練を繰り返す。高機動ロケット砲システム「ハイマース」の展開訓練も実行してきた。

 特に伊江島補助飛行場をEABOに適した訓練場だと評価する。18年末に伊江島で強襲揚陸艦の甲板を模した離着陸施設を拡張し、最新鋭ステルス戦闘機F35Bの訓練を強化した。20年8月、滑走路と発着場も改修した。20年10月に海軍と合同でEABOを想定した演習「ノーブル・フューリー21」を初開催したのも伊江島だった。

 20年11月に浦添市の牧港補給地区に第3上陸支援大隊を配備した。嘉手納基地内に連絡所を置く海兵航空嘉手納連絡隊は同基地内に新たな格納庫を造った。F35Bの運用も示唆している。