第32軍司令部留守名簿 朝鮮籍2人の氏名も 政府名簿には未記載「朝鮮人軽視の姿勢の表れ」


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第32軍司令部(球第1616部隊)留守名簿の表紙(沖本富貴子氏提供)

 第32軍司令部(球第1616部隊)の「留守名簿」では、本籍欄に朝鮮との記載が2人いた。沖縄戦に動員された朝鮮半島出身者について研究する沖本富貴子さんによると、この2人は、戦後に日本政府から韓国政府に渡された別の名簿には記されていない。沖本さんは政府名簿から抜け落ちた可能性に触れ「日本政府による朝鮮人取り扱いのずさんさや、朝鮮人軽視の姿勢が表れているのではないか」と指摘する。

 太平洋戦争には、朝鮮からも多くの人々が動員された。戦後、日本政府が韓国政府に朝鮮人軍人・軍属に関する名簿を渡した。近代史研究者の竹内康人さんが南西諸島の部隊への動員数と死亡者数を集計し、沖本さんがまとめた。それによると、3461人が動員され、701人が死亡したとされる。32軍司令部所属の朝鮮半島出身者は死亡が1人とされてきた。

 今回、公開された32軍司令部の留守名簿に記載されていた2人の氏名とは異なる。日本政府が韓国政府に渡した名簿のうち、死亡した1人の氏名は32軍司令部留守名簿には記されていなかった。留守名簿記載の2人は、本籍が朝鮮黄海道甕津郡と朝鮮慶北大邱府。いずれも戦時中に満州の防空を担った日本軍「第2航空軍司」からの編入だった。1人は26師団に転属とあり、別の1人は生死の記載はなかった。

 沖本さんは「日本政府から韓国政府に渡された朝鮮人軍人軍属の名簿から抜け落ちている朝鮮人がいることが判明した」と指摘し、名簿作成手続きの適正さに疑問を示した。