沖縄で再生医療の実用化へ 注目細胞「エクソソーム」 シミやたるみ、薄毛などへの効果検証


社会
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持続的な再生医療の実現を目指して連携する(右から)セルソースの裙本理人社長、当山美容形成外科の当山拓也院長、フルステムの千葉俊明社長、大阪大学の池松靖人特任准教授=12月25日、那覇市の県立図書館

 再生医療で使用する幹細胞の大量培養技術を持つフルステム(那覇市)、細胞加工物を製造するセルソース(東京都)、当山美容形成外科(那覇市)、大阪大学(大阪府)の4者は、細胞外に放出される細胞の再生を促す小胞「エクソソーム」を使った再生医療の実用化に向けた事業を進めている。対象は皮膚のシミやたるみの改善、薄毛治療のほか、脳梗塞や慢性疲労症候群の治療に用いることを検討している。4者が昨年12月25日、那覇市泉崎の県立図書館で発表した。

 再生医療は体の組織や臓器の欠損、機能不全に対して幹細胞を使って機能を回復させる。既存の再生医療には、幹細胞を直接体内に投与する細胞治療があるが、本事業はエクソソームを直接投与しその効果を検証する。実用化されれば日本初。県内発の再生医療の仕組みとして国内外に売り込み、医療ツーリズムの呼び水とする狙いもある。

 本事業は県の補助金を活用しており、実施期間は2020年10月~22年3月。再生を促す中心的な役割を持つ物質として注目されるエクソソームは、幹細胞を培養し、その培養液から精製される。

 各社が独自に幹細胞を培養している状況で、規格や製造法にばらつきが出る懸念がある。フルステムは自社が開発した自動大量培養装置を用いて、品質に偏りのない幹細胞を高効率で培養する方法を開発する。装置を県内の医療機関に販売することも検討している。

 セルソースは、確立されつつある自社の培養法と精製法を効率良く拡大する方法を検証し、生成物の有効性や安全性を動物に投与して評価する。また製品として安定的に医療機関に届ける空輸法の開発を行う。

 無菌培養の技術を持つ大阪大学はフルステムやセルソースを指導し連携する。

 21年内に動物投与の効果の確証が得られる見込み。当山美容形成外科はエクソソームを実際に患者に投与し、安全性と効果を評価する。皮膚のシミやたるみの改善、薄毛治療、脳梗塞、慢性疲労症候群の治療に用いることを検討している。