岸信夫防衛相が米軍の域外訓練を容認する発言をしたのは、米軍の活動を管理しようとしない政府の姿勢の表れだ。訓練を規制できないつくりになっている日米地位協定の欠陥に加え、制度を運用する政府が県民の安全よりも米軍の都合を優先する姿勢の問題も改めて露呈した。
日本政府もかつては本来、米軍提供施設・区域内で行うことを想定される活動を外で実施することは「(日米地位)協定の予想しないところ」という見解を示していた。1979年の玉城栄一衆院議員(当時)への答弁書に表れている。
83年に外務省が作成した機密文書「日米地位協定の考え方・増補版」でも施設・区域の外で実施できる活動もあるとしつつ「あくまでも例外的なもの」で「歯止めなく広がることは阻止する必要がある」と記していた。一般的に区域外での訓練が認められるかのような岸防衛相の発言とは大きな隔たりがある。
現在の米軍の活動状況はまさに当時の外務省が懸念していた状況になっていないか。米軍は「例外」を拡大解釈し、日本政府が追認する。その結果、米軍の行動に歯止めが掛からず、訓練空域ではない慶良間諸島上空で低空の編隊訓練を繰り返している。
状況の改善には、米軍の活動に規制を掛ける仕組みづくりと同時に、日本政府の対米追従姿勢を改める必要がある。
(明真南斗)