日米地位協定に米軍の移動の自由などは記されているが、訓練や演習に関する規定がない。県民生活に直接大きな影響を与えるような演習や訓練に関する規定が存在しないことは問題だ。訓練については個々の基地の使用条件で定める方式だ。
他国と比べても異例だ。近年、県が進めている他国地位協定の調査を見ると、欧州の米軍駐留国では同意や許可、禁止、制限などの形で、受け入れ国が米軍の訓練や演習に関与できる仕組みがある。全く定めがない日米間の仕組みの問題が際立つ。
防衛省は取材に対し「飛行自体が何らかの規制に抵触するものではない」と答弁したが、在日米軍による低空飛行訓練についての日米合同委員会合意を意識しているのではないか。そもそも日米両政府がこれまで米軍の訓練について規制を掲げて結んだ合意は実効性に疑問が持たれてきた。
今回の低空飛行が規制に抵触しないから認めるという話ではなく、県民生活や県民の安全に対する制度の実効性が問われないといけない。米軍の訓練に歯止めを掛ける仕組みになっているのかが重要だ。歯止めにならない規制をいくら作っても、その下で生活している人にとっては何の意味もない。
(日本政治史)