【深掘り】コロナ時短協力金「線引き」周辺地域に不満も 緊急対策期間はプロ野球キャンプも考慮


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 沖縄県は8日、新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた緊急特別対策を発表し、飲食店への時間短縮営業の要請を31日まで延長し、対象地域に宮古島市、石垣市を追加した。だが、時短対象外の近隣市町村に客が流れて感染を広げてしまうとの指摘もあり、対象地域を限定した対策に疑問も呈されている。また、夜間の会食控えで客足が激減している店舗では、時短営業して協力金を受けた方が助かるという切実な声があり、対象外の飲食関係者から不満がくすぶる。

飲食店を訪れ時短営業について説明する嘉数登県商工労働部長(右から2人目)と松川正則宜野湾市長(同3人目)ら=8日午後6時半ごろ、同市普天間

 8日夕の会見で玉城デニー知事は「首都圏のような爆発的な感染拡大を起こさないため、県の医療体制を崩壊させないためだ」と強調し、時短営業の延長・拡大や首都圏との往来自粛などに理解を求めた。

■「集中的に対策」

 時短要請に応じた事業者には、1日当たり4万円の協力金が支払われる。宮古島と石垣の追加で時短要請の対象地域は7市に広がり、12~31日の期間で、協力金の追加の予算規模は約55億円に上る見通しだ。県幹部は「本来ならば事業者の経済活動を止めたくはない。疫学的な観点を分析し、短期的、集中的に対策を取らざるを得ないと判断した」と説明する。一方、時短要請の対象地域に含めるよう県に要請していた、本部町飲食業組合の儀間伸彦組合長は「データだけを見て、机の上だけで対象地域を決めている。地域の事情を考慮してほしい」と落胆する。

 昨年末から、時短要請が出される名護市以外の北部地域でも感染者が確認され、自主的に営業時間を短縮する飲食店がほとんどだ。儀間組合長は「経営は切羽詰まっている。再度、対象地域の拡大を考慮してほしい」と訴える。北谷町飲食業組合の兼城和彦組合長も「地域を区切って時短営業をする効果はあるのか。感染拡大を止めるには、県内全域で時短営業を行うべきだ」と決定を疑問視した。

■キャンプ日程考慮

 県の緊急対策には、国の緊急事態宣言が発令された1都3県への往来自粛も盛り込まれた。県が「来県自粛」を求めた昨年4月の入域観光客数は前年比で9割減となったこともあり、経済団体からの事前の意見集約で、往来自粛への反対意見が強かった。

 首都圏との往来自粛について沖縄観光コンベンションビューローの下地芳郎会長は「残念だ」としつつも、「Go Toトラベル事業が再開できるまでの間、観光事業者への営業補償が必要ではないか」と県に経済支援を求めていく考えを示した。

 国の緊急事態宣言は2月7日までとなっているが、8日に発表された県の緊急対策は今月31日までの期限となっている。県幹部は、2月1日から始まるプロ野球キャンプの日程が念頭にあると明かす。りゅうぎん総合研究所の試算で、20年のプロ野球キャンプの経済効果は121億6800万円。県幹部は「31日までに感染拡大を抑えないと大きなダメージになる」と見通す。

 だが、国の緊急事態宣言を受けて航空各社は8日、一斉に減便を発表。31日まで、少なくとも沖縄発着の約1500便が減便となる見通しだ。減便期間は延長される可能性もある。例年のようなプロ野球キャンプの実施は不透明感が漂っているのが実情だ。

(池田哲平)