アーニーパイル劇場 デジタルで復活へ “娯楽の殿堂”から新発信


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国際通りにあったアーニーパイル国際劇場=1966年1月(県公文書館所蔵)

 那覇市国際通り商店街振興組合連合会(真喜屋稔理事長)は、かつて那覇市の国際通りにあった「アーニーパイル国際劇場」をネット上に復活させ、音楽や伝統芸能の発信拠点とする新たな取り組みを開始する。デジタル劇場の特設サイトを訪れると、アーティストによる音楽ライブ、エイサーの演武などが楽しめる形を取る。近くクラウドファンディングで資金を募り、早ければ2月中に公開する。

 同連合会はデジタル部会を立ち上げ、拡張現実(AR)を使って国際通りを模したバーチャル空間の構築も検討している。コロナ禍の中で、沖縄に来られなくても国際通りの散策やショッピング、写真が撮れるシステムなども導入する考えで、作業を進めている。

1947年に開館して間もない頃のアーニーパイル国際劇場(提供・NPO法人シネマラボ突貫小僧)

 アーニーパイル国際劇場は沖縄戦直後、現在の那覇市牧志のぶんかテンブス館付近にあった。「奇跡の1マイル」と呼ばれる繁華街へと発展した国際通りの中でも、庶民の娯楽の殿堂として通りを象徴する劇場だった。「国際通り」の名前の由来も、「アーニーパイル国際劇場がある通り」から付いたとされる。

 新型コロナウイルスの感染拡大で、各種イベントやコンサートが中止となったことを受け、新たな文化イベント発信の場について、国際通りの事業者やデジタルの専門家らが協議を進めている。

 同連合会は、人気キャラクターを登場させて国際通りの魅力を発信するなど、さまざまな形でデジタルの劇場を活用する考え。感染症の収束後はリアルとデジタルを融合させたイベントの開催なども目指す。

 真喜屋理事長は「アーニーパイル国際劇場の周りに店が集まり、少しずつ街ができていった。コロナ禍で厳しい状況に置かれているが、知恵を出し合って新しいものをつくり、国際通りのブランドを世界に発信していきたい」と語った。

 デジタルの「アーニーパイル国際劇場」の開発・運営資金は、クラウドファンディングの「キャンプファイヤー」で、2月1日から募る予定。目標額は300万円に設定している。

 アーニーパイル国際劇場 1947年12月に米軍政府が許可した民間の映画劇場で、伊江島で戦死した米国人従軍記者の名にちなんで名付けられた。那覇市牧志に露天劇場として建てられ、後に本格的な劇場として改築された。戦後の大衆娯楽センターとして親しまれたが、70年に国際ショッピングセンター建設のために取り壊された。