【記者解説】アメとムチ鮮明の施政方針 辺野古推進の一方で名護東道路アピール


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 菅首相は18日の施政方針演説で、名護市辺野古への米軍普天間飛行場の移設を推進する考えを改めて示した。その一方で、今夏に全面開通し、さらなる延伸も検討しているとされる名護東道路を成果として誇示した。自身肝いりの「北部振興策」と基地問題を並列に語ることで、「アメとムチ」を使い分ける沖縄への態度が透けて見えた。 (安里洋輔)

 名護東道路は、名護市伊差川から許田を結ぶ全長8・4キロで、整備区間は伊差川から数久田までの6・8キロに及ぶ。事業費は962億円で、2021年7月までの全面開通を目指している。菅首相は、この工事に関連し、基地負担軽減担当相を兼務した官房長官時代の17年12月に現地を視察。普天間飛行場の移設先に近接する名護市久辺3区の区長らを前に、工期の短縮を明言した経緯がある。

 昨年10月に実施した所信表明演説でも、自身が主導した北部訓練場の一部返還を「着実に前に進めた」と胸を張った。「実務家」を自任する菅首相らしいアピールを続けたといえる。

 象徴的だったのは、自身が「政治の師」とする梶山静六元官房長官に言及した場面だ。

 梶山氏から受け継いだ政治信条として「国民に負担をお願いする政策も必要になる」とし、自身が進める政策への理解を求めた。

 菅首相の「辺野古」への執着は梶山氏からの影響が強いともされ、恩師を持ち出した場面に政治家としての思いがにじむ。

 ただ、これまでの沖縄への態度を見ていると、痛みを強いる政策への理解を一方的に求めるだけで事足りると考えているようにも映る。「沖縄の皆さんの心に寄り添う」。定型句のようにつぶやく言葉が空虚に響く。