グスク時代の土馬やジュゴン骨製品を文化財指定 遺跡や御嶽から出土 豊見城市


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豊見城市の有形文化財に指定された、ジュゴンの肋骨で作られた骨製品(上)と土製品の土馬=6日、豊見城市

 【豊見城】豊見城市文化課は約30年前に「高嶺古島遺跡」から出土した土馬(どば)と、20年前に「宜保アガリヌ御嶽」で出土した骨製品を市の有形文化財に指定した。指定は2020年11月2日付。いずれも14~15世紀の「グスク時代」に呪術や祭祀(さいし)に使われていたとみられている。同課は「市内唯一で県内でもまれな重要な資料だ。当時の豊見城にいた人々の生活を知る上で貴重だ」と評した。

 土馬は本土では雨乞いや大雨がやむのを祈願し、疫病やたたり神を封じるため神祭にささげられていたという。今回見つかった土馬も本土の精神文化が伝播し同様の目的で使用されていた可能性があるが、市文化課は「さらなる考察が必要」としている。

 土馬は1988年、豊見城市高嶺の老人保健施設建設に伴う発掘調査で出土した。馬の形をした土製品で、足や尾部分が欠け、首からたてがみ部分がつまみ出すように形成されており、表面は全体が磨かれている。縦2・7センチ、横4・4センチ、重さ34・4グラム。県内では1991年に玉城村(現南城市)の糸数城跡で出土したという報告がある。

 骨製品は2001年の宜保土地区画整理事業の発掘調査で見つかった。ジュゴンの肋骨(ろっこつ)で作られ、弓状の形をしており、中央に直径8ミリの穴が開いている。長さ21・3センチ、幅1・8センチ、重さ44・8グラム。端に弦をかける切り込みのような跡があり、弓としての機能を有していたとみられている。だが、具体的な用途については明らかになっていない。県内では勝連城跡や今帰仁城跡で見つかっているが、本島南部では初。

 市文化課は2件の指定が20~30年かかったことについて「比較、調査研究のため県内で類例資料の出土の増加を待っていた。その間、類似したものを確認できなかったため、まれであると判断し指定に至った」とした。市有形文化財は今回の2件を含め計11件目となった。2件は豊見城市伊良波の市歴史民俗資料展示室で見ることができる。