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保育園入園には「離婚するしか」…悲痛な声に押され議員に 「女性リーダー育てる仕組みを」石原朝子県議<「女性力」の現実 政治と行政の今>5


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

written by 比嘉璃子

「それぞれの特性を活かして一つになって取り組めたら、政治も家庭もいいものができる」と話した石原朝子県議=県議会棟

 「僕たちは離婚したらいいんですか」

 旧東風平町時代から八重瀬町役場に36年間勤めた石原朝子氏(60)は児童家庭課長だった数年前に、認可保育園に子どもを入れたいと切望する若い夫婦の悲痛な問いが忘れられない。認可保育園の入園は就労時間など家庭の事情を点数化し、自治体が判断する。夫婦は共働きだったが、非正規雇用だったために就労時間が短く、優先順位が低かった。不安定雇用だからこそ、子どもを預けて安定した職に就くことが必要だったが、「守れない自分が歯がゆかった」。

 行政の力だけでは限界を感じ、地域の課題を解決したいと2018年3月に早期退職し、9月の八重瀬町議選に出馬した。7月に町議選に臨みたいと話を持ち掛けた時、夫は生活が変わることや有権者の支持が得られるかを心配して反対し、2週間の「沈黙の時間」が流れた。それでも町のために役立ちたいと、再び思いを伝えたところ、夫は「人生、悔いのないようにやってみたらいい」と背中を押してくれた。

 町議になると、町の暮らしやサービスの持続を今以上に豊かにするには、政党に所属して県政の場で取り組むことが必要だと感じ、20年6月の県議選に自民党の公認を得て出馬した。議員になって、政治の場に女性の視点が必要だと感じるが、女性議員はまだまだ少ない。「リーダーとして社会に表立つよう女性に意識付けしてこなかったからだ」と指摘する。

 役場に就職した当時は、男性の方が昇進が早かった。それが当たり前だったから、女性も男性の支援に回った。「この人ならついていきたい」と思う女性の先輩たちが、家庭や子育てを理由に昇進を断っていく姿が惜しかった。その姿を見て「後輩が期待しているから、チャンスが来たら逃げずにやってみよう」と思い、13年から児童家庭課長を5年間務めた。

 最近の10年で女性の活躍がうたわれるようになると、少しずつ女性の昇進の機会が増え、女性を取り巻く環境が変わった。職場では若い世代で家事や育児を担う男性が増え、男性の意識が変わっていくのを感じた。一方、これまで支援役に回ってきた女性が社会に表立って活躍するには「リーダーとして育てる教育期間が必要で、(クオータ制の導入など)意図的に整備を進めなければ変わらない」と指摘する。

 「同じように子育てをしていても、特性によって女性は妊娠や出産を経験したり、役割が違ったりする。経験から実感することもあり、視点も違う」。互いに足りない視点を補うことで、家族が成り立つように、政治にも男女の視点を反映することが重要だと考えている。

 児童福祉の現場では、壊れていく家庭や悩む家族を見てきた。自分が働き続けられたのは、「周りで家族の支えがあったからだ」と家庭の重要性を痛感した。県内には「非正規で働く夫婦が多い。頑張っている若い夫婦を応援したい」と、強い思いを語った。


 世界的にも遅れている日本の「ジェンダー平等」。玉城県政は女性が活躍できる社会の実現を掲げ、県庁内に「女性力・平和推進課」を設置しましたが、政治や行政分野で「女性の力」を発揮する環境が整わない現状があります。女性が直面する「壁」を検証します。報道へのご意見やご感想のメールは、seijibu@ryukyushimpo.co.jpまで。ファクスは098(865)5174。

 

 

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