<米バイデン新政権への玉城知事書簡全文>辺野古新基地「再検討を」「アメリカの国益も損なう」


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 沖縄県の玉城デニー知事が、2021年1月13日付でバイデン新大統領とハリス副大統領に宛てて送った書簡の日本語訳は次の通り。
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 この度は、次期米国大統領および副大統領へのご選出誠におめでとうございます。145万沖縄県民を代表し、謹んでお祝い申し上げます。米国におかれましては、平素より我が国の安全保障及び東アジアの平和と安定の維持に多大なるご尽力を頂き、感謝しております。

 アメリカ合衆国には、沖縄をルーツに持つ人々が数多く在住し、例えばカリフォルニア州の沖縄県人会会員数が米国本土で最多となる1千名を超えるほか、ハワイ州においては沖縄からの移民による県系人が約5万人存在するなど、アメリカ合衆国と沖縄は歴史的にも深い繋(つな)がりを有しており、沖縄県民は戦後アメリカ文化も取り入れながら独特の文化を育んでまいりました。今後、御政権と緊密な協力関係を築いていきたいと望んでおりますので、何卒(なにとぞ)宜しくお願い申し上げます。

 私は、日米安全保障体制を含む日米同盟関係が、これまで我が国及び東アジアにおける平和と安定の維持に寄与してきたものと理解しております。一方で、沖縄県の面積は日本の国土面積のわずか0.6%にすぎませんが、嘉手納飛行場をはじめ在日米軍専用施設の7割以上は沖縄県に集中しています。それに伴い、第二次世界大戦終戦以後、航空機騒音や事故、軍人等による犯罪、PFASをはじめとする有害物質による環境汚染など、沖縄県民は様々な問題と向き合ってまいりました。

 また、近年の中国の軍事的な台頭により、沖縄に集中している固定的な米軍基地は脆弱(ぜいじゃく)性を増しており、米国においても「遠征前方基地作戦(EABO)」等の兵力の分散化・小規模化を重視する作戦にシフトしていると承知しております。インド太平洋地域における安全保障政策の決定にあたっては、日米同盟の安定的な運用という観点から、沖縄の基地負担の軽減についてもご高配を賜りますよう、ここに要請いたします。

 特に、現在進行中の沖縄の普天間飛行場代替施設の建設計画については、翁長前知事と私が同計画への反対を公約に掲げて当選し、同計画の賛否に限定した県民投票では、投票総数の71.7%、43万4273人の圧倒的多数の県民がこれに反対する意思を示しました。同計画により埋め立てが行われている海域は、ジュゴンをはじめとする生物の多様性が極めて高い世界的にも重要な海域です。また、同海域にはマヨネーズ並みの軟弱地盤が存在するため7万1千本もの杭を打ち込む大規模な地盤改良工事が必要で、移設完了までに要する期間が今後少なくとも12年、総工費が約9300億円に達することが日本政府から公表されています。さらに、埋め立て区域の約7割は水深が深く、起伏に富み軟弱地盤の分布が不均一であることから不同沈下が発生することや、活断層の問題があることが専門家から指摘されております。このため、仮に代替施設を十数年かけて完成させたとしても、滑走路の運用に支障が生じる可能性が高い上に、ひとたび大きな地震が起きた場合には米軍人の生命や米軍の財産に多大な影響を及ぼすことになります。それはひいてはアメリカの国益を損なうことにもなります。以上を踏まえ、御政権の下で同計画の再評価をご検討いただきたく、お願い申し上げます。

 ご多忙の折、本件にご関心をお寄せいただき、感謝申し上げます。今後とも何卒よろしくお願いいたします。