【島人の目】神様はおばあを忘れた


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 108歳のイタリア人女性、ファティマ・ネグリーニさんは昨年新型コロナに感染し奇跡的に回復した。元気になった時、ファティマさんは「神様はどうやら私を呼び寄せるのを忘れたようだ」とジョークを飛ばして医師や看護師らのスタッフを笑わせ、それはメディアで大きく伝えられた。

 イタリアでは2021年1月25日現在、8万5千人以上の人々が新型コロナで亡くなり、その多くは80歳以上である。そのために新型コロナから回復した高齢者には注目が集まる。欧州全体でもその傾向は強い。

 例えばイタリアよりも新型コロナの犠牲者が多い英国は、世界で最も早く新型コロナワクチンの接種を始める際、最初の患者として90歳の女性を選んで話題になった。同国ではその後も94歳と99歳のエリザベス女王夫妻がワクチン接種を受けてニュースになった。そこには、できるだけ多くの人にワクチンを受けるように促す宣伝の意味合いが込められている。世界にはワクチン接種を嫌う人々が少なからず存在するのだ。

 ここイタリアでは昨年12月27日にコロナワクチンの接種が始まり、1月24日現在、180万人余りが接種を受けた。コロナを克服した冒頭のファティマおばあも1月18日に接種を受け再びニュースになった。

 イタリアのワクチン接種件数は欧州では英国に次いで多い。だがその数字は当初の計画に比べると遅れている。薬の流通量が少ないためだ。

 コロナワクチンは医療関係者に優先的に接種され、次に感染すると重症化しやすい高齢者に接種される。108歳のファティマおばあは高齢者として優先的に接種を受けると同時に、ワクチン接種者としては世界最高齢とも見られるその年齢によって、イタリア中に明るい話題を振りまいている。

(仲宗根雅則、イタリア在、TVディレクター)