オンラインで学ぶ沖縄戦 コロナで来館者が9割減少したひめゆり資料館の取り組み 


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 ひめゆり学徒隊の沖縄戦を伝える糸満市のひめゆり平和祈念資料館では、新型コロナウイルスの影響で団体予約のキャンセルが相次ぎ、昨年度と比べ来館者が9割近く落ち込んでいる。館内での平和講話も中止を余儀なくされた。平和学習の機会が失われる中、同館は昨年11月から、沖縄戦を伝える新たな取り組みとしてオンラインで平和講話を開始した。普天間朝佳館長は「今、何もしなければ修学旅行の行き先が沖縄でなくなるかもしれない。平和学習をつなぐ大事な取り組みだ」と語る。

オンラインで県外の高校に平和講話を行う説明員の尾鍋拓美さん=1月26日、糸満市のひめゆり平和祈念資料館

 2019年度(4~12月)に約41万人だった来館者は、新型コロナの影響を受けた20年度(同)は約5万5千人に激減した。国や県の緊急事態宣言の発出で休館も計73日間に及んだ。普天間館長は「開館以来、最大の危機だ」と述べる。同館は開館以来、行政の財政支援を受けずに運営を続けてきた。入館料は運営の要で、来館者の激減は大打撃となった。

 平和講話も昨年2月以降キャンセルが相次いだ。非戦争体験者の職員と共に月4回ほど、館内で説明を続けていた元学徒2人の活動も中断せざるをえなくなった。厳しい状況下で学習機会を絶やさず、再び資料館に足を運んでもらうため、同館はオンライン平和講話を始めた。来館をキャンセルすることになった学校などの要望を受け、今年1月までに11回実施した。

 1月26日にオンライン講話を受講した岐阜県の各務原西高校は、昨年6月に修学旅行で来館予定だったが、新型コロナの感染拡大で来県を見送った。串戸正一教諭は「生徒たちは戦争から遠い世代。沖縄に行けなくても戦争を学ぶ体験が絶対に必要だと思い、オンライン講話をお願いした」と語る。

 講話は同館説明員が担当し、写真や証言動画などを用いながらひめゆり学徒の沖縄戦を伝えた。説明員の尾鍋拓美さんは「オンラインは生徒の反応が見えないなど課題もある」と感じている。一方、新型コロナ収束後には修学旅行の事前事後学習にオンライン講話を取り入れ、資料館を訪れた時の学習をより深めることができると、可能性も見い出している。普天間館長は「これまでの蓄積を生かし希望を持って進むしかない。元学徒が戦争の悲惨さと命の大切さを伝えてきた場所と活動をつなぎ、守ることが責務だ」と強調する。

 同館は3月22日から展示入れ替えのため休館し、「戦争からさらに遠くなった世代へ」をテーマに4月12日にリニューアルオープンする。寄付も募っている。問い合わせは同館(電話)098(997)2100。
  (赤嶺玲子)