<深堀り>県、判決「異常」と批判 辺野古サンゴ訴訟 県敗訴 「法律論逆行」上告へ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 名護市辺野古の新基地建設に向けたサンゴ類の移植を巡り、沖縄防衛局の申請を許可するよう農林水産相が指示したのは違法だとして県が指示取り消しを求めた訴訟で、福岡高裁那覇支部は県の訴えを退けた。玉城デニー知事は「極めて遺憾だ」と反発し、判決の異常さを強調。県は上告する見通しだ。政府は裁判所でお墨付きを得たとして、軟弱地盤の改良工事を追加するための設計変更申請についても同じ手法を取る可能性がある。県の最終判断に向けて互いの出方を探る神経戦が続く。

 県や弁護団にとって棄却の結果は想定内だった。裁判に至る前段階で、県は総務省に設置されている第三者機関「国地方係争処理委員会」に訴えたが退けられた。係争委の富越和厚委員長は元東京高裁長官で「そういう人が判断を下している以上、ある程度、結果は予想できた」(県幹部)と言う。

 ■想定外

 関係者たちが驚いたのは判決の中身だ。実質的な議論に入らないこれまでの判決と異なり、議論の内容に踏み込んだ上で県の対応自体を否定するものだった。県や弁護団は「地方自治の否定だ」「これまでの法律論に逆行している」と問題視した。

 午後2時半の判決言い渡し後、県と弁護団は100ページに及ぶ判決文を読み込み、知事声明を作成した。午後4時予定だった玉城知事の囲み取材は1時間余、遅れた。県幹部の一人は「判決を見て、通り一遍ではいけないと考えた。県民にも判決の内容を分かってもらいたいと思った」と時間をかけた理由を説明した。

 玉城知事は報道陣の前に姿を現すと、判決の内容について「常識では考えられない」と強く批判した。

 ■温度差

 一方、政府高官は「(判決は)既に見えていた話だ」と淡々と受け止めた。辺野古新基地建設を巡る裁判で政府が敗訴したことはなく、多くの政府関係者は冷静に法廷闘争を見詰める。そもそも担当者を除けば、関心そのものが薄く、県との温度差が際立つ。防衛省は本紙の取材に、改めて工事の推進に強い意欲を示した。

 軟弱地盤に対応するために地盤改良工事を追加する設計変更は新基地建設に必須で、県と政府の対立の中では天王山となる。沖縄防衛局が県に申請しているという面は、今回のサンゴ移植申請と似ている。裁判でお墨付きを得たとして、政府が同様の手法を使う可能性がある。ただ、政府関係者は実際にどの手法を取るかは「県の出方による」と慎重な発言に終始した。

 県幹部は「反論すべき点はたくさんある。これからだ」と最高裁での闘いや設計変更の審査に向けて意気込んだ。
 (明真南斗、知念征尚)