沖縄県が緊急宣言解除の目安を示した背景 医療者、経済界は県の対応をどう見る?


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 新型コロナウイルス感染拡大を受け、今月28日まで延期された県独自の緊急事態宣言。県は今回、過去2回の宣言時とは違って解除の目安を初めて明示した。1日当たりの新規感染者数を30~40人程度まで引き下げるなどの内容だ。一定の流行を受け入れることはやむを得ないとの考え方に基づくが、過去には宣言解除後に感染が再拡大したこともあり、医療関係者の中には「ゼロコロナ」を目指すべきだとの指摘もある。感染防止と経済活動を両立させるはざまで、難しいかじ取りが迫られている。

 宣言解除の目安は、県の判断指標で感染状況を現在の第4段階から第3段階まで落ち着かせることだ。

 具体的には(1)療養者数が329人以下(2)1週間当たりの新規感染者が211人以下(3)重症・中等症100人以下(4)入院患者数200人以下―とすることを掲げる。これらを厳密に満たさなくても、医療体制の確保状況や新規感染者数によって解除を総合的に判断する目安も設けた。

 県は4日、今後の流行に関する推計を示した。宣言を延長すれば2月28日には1週間当たりの新規感染者数は179人(1日当たり26人)まで減らせ、療養者数はピーク時の約800人から245人に減少すると見込む。

 年末年始以降の感染拡大で、1月は1日の感染者数が100人を超える日も続いた。県は宣言を解除できる水準まで感染を抑え込めば、感染者に必要な医療を提供できる余裕が出るとの見立てを描く。

 こうした県の対応について、県中小企業家同友会の喜納朝勝代表理事は「国が3月7日までの延長を示したのに対し、県が2月いっぱいまでと独自に判断した点は評価できる」と話す。その上で「前回は緊急融資で何とかつなげたが、中小企業にとっての血液である資金は底を突いている。宣言を解除しても経済は急に回復しないので、補償面をもっと考えてほしい」と注文する。

 一方で、群星沖縄臨床研修センター長の徳田安春医師(臨床疫学)は経済活動の再開を望む声に理解を示しつつ、「経済活動を再度止めないためには、市中感染抑え込みを目標としたゼロコロナ戦略への変更を行う必要がある」と指摘する。

 徳田氏は「そのためには、検査数が少ないので増やすべきだ。医療機関や介護施設での定期的なスクリーニング行政検査、感染密度の高い地域でのサーベイランス(監視)検査もする。水際対策としては来県前に自発的に検査を受けるよう知事から来県者へ呼び掛けをしてほしい」と強調した。国も県も、「台湾、ベトナム、ニュージーランドなどのゼロコロナの成功国から戦略を学ぶべき」とし、感染対策における目標設定の見直しを求めた。