なぜ辺野古区は基地建設を容認するのか? 明星大の熊本教授が著書「県民の対立は国に利する」


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 【名護】「なぜ辺野古区は基地建設を容認するのか」。この問いに正面から取り組んだ研究書「交差する辺野古―問いなおされる自治」が9日に刊行される。明星大の熊本博之教授(45)が約20年にわたって辺野古で取り組んできたフィールドワークの成果をまとめた。

辺野古のフィールドワークの成果をまとめた著書を手にする熊本博之明星大教授(本人提供)

 熊本さんが辺野古でのフィールドワークに取り組み始めたのは大学院に在籍していた2001年。当初は反対運動を追い掛けていたが「生活者の中にも基地問題は存在している」と考え、区民の聞き取りを始めた。「抵抗運動ではなく、人々の生活の場としての辺野古を描いてきた」と振り返る。

 著書では聞き取りや資料などを踏まえ、区行政委員会が基地建設を容認した経緯や反対する区民の動向などを詳述する。1950年代、辺野古に米軍キャンプ・シュワブが建設された経緯や区と基地との関係も説明する。熊本さんは「50年代は基地建設が各地で強行される時代で、あきらめと期待が交錯する中で辺野古はシュワブ建設を容認した。その経験から、90年代以降の普天間移設容認と条件交渉も『合理性のある判断』と認識された」と解説する。

 シュワブゲート前での基地建設反対運動と、辺野古区民の間の「対立」にも言及する。相互に歴史や心情の理解、対話が不足していることを指摘し「基地建設阻止は『(新基地は)来ないに越したことはない』と思う辺野古区民も共有できる目的だ。両者の対立は結果的に基地建設を進めたい国に利する」と力説する。そして「未来を考えた際、(移設容認を)考え直すべきだ」と区民らに提言する。税別3600円。問い合わせは発行元の勁草書房(電話)03(3814)6861。
 (塚崎昇平)