〈63〉アルコール依存症 節度ある適度な飲酒を


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 年末年始は何かとお酒を飲む機会が多くなり、例年だとちまたには酔客があふれたものです。しかし昨年は新型コロナウイルスのこともあって、年末年始の年中行事も自粛され、さすがに街に出る人は少なくなりました。その代わりに長引いた自粛生活によってストレスが増大しており、そのストレスを何で紛らわすかが問題となっています。

 コロナ禍の前は、ストレス解消の場として仲間同士の飲み会がよく使われ、世間では飲酒の機会が多くなっていました。このような機会的飲酒が増えてくると、中にはいつの間にかアルコール依存症となって、ほとんど毎日酒浸りとなり、体を壊してしまう人が出てきます。

 アルコール依存症は生活習慣病です。アルコール依存症をはじめ、スマホ依存症、ギャンブル依存症など全ての依存症は生活習慣病といっても過言ではありません。一度依存症になると、全ての行為は依存の対象を追い求めることが優先となり、仕事や学業、人との約束事など大事なことも二の次になってしまいます。

 そうなると生活は破綻し、みんなから厄介者扱いされてしまいます。毎日の習慣は恐ろしいもので、なかなか止められません。止めることでさまざまな精神症状が出てきます。

 アルコール依存症の場合だと、まずイライラや不眠、ひどい場合には幻覚、妄想まで出現します。何よりも恐ろしいのは、長期間の飲酒習慣により次第に脳細胞が破壊され、脳は萎縮しスカスカとなり、しまいには認知症となってしまうことです。

 アルコール依存症は生活習慣病であり、晩酌の習慣でも依存症となる恐れがあります。節度ある適正飲酒にとどめるように、日頃から注意が必要です。厚生労働省が挙げる適正飲酒量は一日当たり純アルコール20グラム程度で、5%のビール中瓶一本分となります。

 一度、依存症になると治すのは難しいものです。加減して飲むことができなくなってしまうので、治すには断酒しかありません。アルコール依存症の疑いがある人は、認知症や肝硬変になる前に、最寄りの精神科や断酒会にぜひご相談ください。

(仲本政雄、博愛病院、内科・精神科)