【深掘り】知事の米軍基地「50%以下」目標 具体策は明確にせず、県政与党からも不満


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沖縄県議会

 玉城デニー知事は16日の県政運営方針の演説で、米軍専用施設の全国比について、県が日本復帰50年を迎えるのに合わせ「50%以下を目指す」という目標値に言及した。具体的にどの基地を削減するかという点は明確にしていない。一方、県議会の2度の海兵隊撤退決議に触れ、在沖米海兵隊の大幅削減が射程にあることを示唆した。

 数値目標を県が掲げることに関し、県政与党からは「根拠が曖昧(あいまい)で、数字のトリックに使われかねない」との懸念が上がっていた。海兵隊撤退の明記を求める声が複数の会派からあり、玉城知事が海兵隊の撤退に踏み込むかどうかが焦点だった。

 16日に登壇した玉城知事は「県議会でこれまで2度、『在沖米海兵隊の撤退を図ること』を全会一致で決議していることなどを重く受け止め」と述べ、自身の言葉ではなく県議会が決議した事実を借りて海兵隊撤退に触れた。

 名護市辺野古の新基地建設阻止やオスプレイの配備撤回など、玉城知事の政策一つ一つを全て実現すれば海兵隊は大規模な駐留を保てず撤退を余儀なくされるとみられる。それでも在沖米海兵隊の撤退を明言しないのはなぜか。県関係者は「日米安保を認める立場としてはぎりぎりの表現だったのではないか」と語り、日米安保体制に理解を示す立場と、与党からの求めを折衷したとの理解を示した。

 与党内では県議会の決議を重く受け止めるという表現や、沖縄21世紀ビジョンにある「基地のない平和で豊かな沖縄」という文言を盛り込んだことを一定評価する声が上がった。一方で、自身の言葉で海兵隊撤退など「50%以下」の根拠を語らなかったことに不満も漏れる。与党幹部の一人は
「インパクトに欠ける。政府を動かせないのではないか」と批判した。

 与党から、大田県政が示した「基地返還アクションプログラム」に匹敵するような大規模な基地撤去計画に発展させるよう求める声も大きい。

 だが、玉城県政は返還する基地はあくまで日米両政府が考えることだと考え、県側から指定しない方針を固めた。県幹部の一人は、実現の可能性を高めるためだと説明する。「県の方で絵を描いても、これまで相手にされなかった。各基地で働く従業員の事情など、総合的に考える必要があり、両政府が検討し決めることで現実的な計画になる」と強調した。

(明真南斗)