差別や偏見「喜劇」に 琉球人の「展示」題材に沖縄と本土の関係描く 21日まで無料配信


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「琉球」の人間の特徴を語る調教師風の男(中央・島袋寛之)と、陳列された女(左・棚原奏)、陳列された男(津波信一)=13日、西原町のさわふじ未来ホール

 沖縄発の戯曲作品の活用を通し、沖縄の歴史や社会に向き合うなどの取り組みをする「AKNプロジェクト」が西原町のさわふじ未来ホールで13、14の両日、喜劇「人類館」(知念正真作、上江洲朝男演出)の無料ウェブ配信に向けて動画を撮影した。沖縄と本土の歴史を背景に、差別や偏見に苦悩するうちなーんちゅを描いた一幕物を、一部ダブルキャストで収録した。陳列された男役を津波信一、調教師風な男役を島袋寛之、陳列された女役を棚原奏が演じた、13日夜の部を取材した。動画配信は21日まで。

 物語は1903年に内国勧業博覧会で「琉球人」らが“展示”された「人類館事件」を題材に、人類館に陳列された男女と、彼らを監督する調教師のやりとりから始まる。沖縄戦中やベトナム戦争中の沖縄など、時代や場所、役柄が、めまぐるしく入れ替わりながら展開する。

 1976年に初演された「人類館」は「喜劇か悲劇かは見る人の判断による」などの理由から、多くは作品の頭には、何も付けずに上演されてきた。だが本公演はあえて「喜劇」を冠した。公演の総合プロデューサーで知念正真の娘・知念あかねさんは「作品で描かれた時代を生きた人は、作品に入っていきやすいが若い人には難しい。間口(まくち)を広げ、作品を見てもらいやすくしたいと思った」と話す。

手りゅう弾と思われるものを手にする男(中央)と一緒に自決を試みる調教師風の男(左)と女

 上江洲は「時代が変わり、どのような反応が観客から起こるか予想はつかないが、稽古をしていて不思議と古い感じはしなかった。実際、作品テーマの『歴史は繰り返す』ではないが、コロナ禍の現在、差別や偏見が正義という包装紙に包まれて、首をもたげてきている。同じ演出、台本でもキャストによって違う面白さが提示できた。配信をきっかけに、新たな作り手や観客が出てきてくれればと思う」と語った。

 女性蔑視の発言が取りざたされる昨今、差別や偏見に満ちたせりふややりとりを笑って良いか戸惑いがあった。しかし、機転を利かせてタイムリーな女性蔑視発言をせりふに盛り込み、緩急をつけた演技で笑わせた津波の存在が、メッセージ性の強い同作に清涼剤として機能し、作品を喜劇として成立させた。

 配役の一部を変更した別バージョンは調教師風な男役を末吉功治、女役を上門みき、男役を津波。両バージョンとも、AKNプロジェクトの喜劇「人類館」特設サイトから、視聴できる。 (藤村謙吾)