在日米軍駐留「思いやり予算」1年延長で合意 基地従業員への影響を回避


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 【東京】在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)を巡る日米両政府の交渉は、バイデン米新政権発足後初めて交渉した2日から、わずか2週間で暫定延長に合意した。現行協定の期限を3月末に控える中、交渉がまとまらなければ米軍基地従業員の雇用や生活に影響を与えかねなかっただけに、関係者からは安堵(あんど)の声が聞かれた。だが、米側との交渉は4月以降も継続されることとなり、懸案は来年度に持ち越しとなった。

 県内では全駐留軍労働組合沖縄地区本部(全駐労沖縄地本)が、福利厚生部門(IHA、諸機関労務協約)を含む適正な労務費負担の継続を求めていた。
 全駐労沖縄地本の與那覇栄蔵委員長は「協定が期限切れにならず、安心した。期限が切れ、韓国のように給与の不支給が起こると懸念していた」と述べ、今後の交渉を注視する姿勢を示した。

 前回、前々回の交渉では日本が米国に対し、福利厚生部門で2度続けて負担削減を求めた。その結果、在沖米軍基地では定年を迎えた労働者の再雇用時に、雇用形態が非正規に変更され、収入が半減した。3年かかって雇用形態の変更を撤回させたという。また、3事業所が閉鎖になり、約100人が解雇の対象になったという。與那覇委員長は「労務費の負担減は雇用に影響が出る。雇用が守られるように適正な労務費負担を続けてほしい」と求めた。

 政府は2021年度予算案で、現行協定に基づく駐留経費負担として2017億円を盛り込んでいる。労務費に1294億円、訓練移転関連に10億円、提供施設整備に218億円など沖縄との関わりも深い。

 一方、今後の交渉には課題も横たわる。政府関係者は「安全保障環境が厳しさを増す中で、日米がどう取り組み、どう同盟を強化するか。そうした議論の中で駐留経費負担の話も出てくる」と話す。米中の国力差が縮小していく中、思いやり予算や基地負担も含めた、日本・沖縄の負担増の圧が高まる可能性がある。