全国45%にとどまる 人手、専門性不足に課題 学校防災水準達成


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 宮城県石巻市立大川小の津波避難訴訟確定判決を機に強化された学校防災の水準を達成したのは、全国の市区町村の45%にとどまることが28日、共同通信アンケートで分かった。避難場所や危険区域を示したハザードマップの想定を超える災害への備えを求められることに、戸惑いの声が多い。教員の人手不足や専門性不足が課題で、取り組みに時間がかかっている実情が浮かび上がった。

 自治体から戸惑いの声

 アンケートは昨年10~12月、全1741市区町村を対象に実施、84%に当たる1469市区町村が回答。

 大川小では児童74人が犠牲となり、市や学校の事前防災の不備を認めた仙台高裁判決が2019年10月に確定。判決や、それを踏まえて文部科学省が全国の教育委員会に危機管理マニュアル見直しを求めた通知は、学校現場にハザードマップを超える災害への備えや複数の避難場所確保を求め、校長らは「地域住民よりはるかに高い防災知識」を習得していなければならないと指摘。大川小が、マップでは浸水予想区域に含まれていなかったためだ。

 こうした水準を「判決確定前から達成していた」と答えた自治体は27%、「確定後に見直し水準を満たした」は19%。両者を合わせると45%に相当。一方、見直し「実施中」は20%、「今後実施予定」は25%。現状で「対応予定はない」と答えた自治体も8%あった。

 対応が難しい項目を複数回答で尋ねると、75%が「ハザードマップを超える災害の想定」を挙げた。「複数の避難場所・避難経路の確保」と「管理職の高水準の防災知識習得」は、それぞれ39%。「今後見直しを実施予定」と答えた茨城県鉾田市は「ハザードマップを超える災害とは何をどこまで想定するのか」と戸惑いを隠さなかった。