「火葬場が混み合い、自宅などでご遺体を安置する期間が長引いている。遺族にも負担になっている」。2日までに、りゅうちゃんねる取材班に情報が寄せられた。取材すると、亡くなって火葬まで1週間近くかかる事例もあった。高齢化で年間の死者数が徐々に増えていることに加え、墓移転や墓じまいなどの「改葬」に伴う火葬の増加が逼迫(ひっぱく)の背景にある。本島中部の市町村からの利用者が多い浦添市や、豊見城市にある公営火葬場は、過去最多だった19年度を超えるペースで火葬件数が推移している。
墓地埋葬法上、亡くなって24時間以内は原則として火葬できず、通常は2~3日後に火葬や告別式となる。沖縄市の男性(61)は2月に80代の母を亡くし、本島中部の火葬場を使用できたのは4日後だった。その間は葬斎場に安置、家族が交代で対応した。男性は「家族がいなかったら何日も続けるのは難しかった」と振り返った。
火葬までの時間が長引けば、精神的な負担のみならず、安置に必要な経済的負担もかさむ。南部のある葬儀関係者は、昨年11月ごろから火葬待ちが目立つようになったとして「最近は火葬が初七日の当日という例もあった。ご遺族の疲労困憊(ひろうこんぱい)が気の毒だ」とおもんぱかった。
政府の人口動態統計によると、2020年の県内死亡数は1万2644人(速報値)で、前年から100人余増えた。人口が増えている沖縄だが、亡くなる人の数も微増が続く。
火葬場施設として県内最大級のいなんせ斎苑(浦添市)では、2020年度は1月末時点で、4018件の火葬を扱った。過去最多だった19年度(4632件)を上回るペースだ。混み合う日が続き、担当者は「季節的なものもあるが、高齢化の進展も影響しているのではないか」と指摘した。
その他の要因として、墓を移したり継承を終えたりする際の「改葬」に伴い、納められた遺骨の火葬が増加しているという。20年は墓行事に適しているとされる旧暦の「ユンヂチ」(閏月)があったことも影響しているとみられる。今年に入っても改葬の利用者は少なくない。
豊見城市にある南斎場では、改葬について、20年度は1月末時点で177件で、施設が稼働した14年度以降で最も多かった。昨年6月から利用者の予約時間をずらすなどして、火葬の「3日待ち」を減らす工夫を凝らした。それでも6月~12月までに、主な利用者である南部6市町の住民にも「3日待ち」が36件あった。
南斎場の担当者は「2月も数十件の改葬があった。一般火葬の依頼が来ても、既に改葬の予約があり影響している」と語った。
(當山幸都、名嘉一心)