【東京】南城市文化センターシュガーホール元芸術監督で2019年2月に亡くなった作曲家の中村透氏を追悼する日本オペラ協会公演「キジムナー時を翔ける」が2月20日、新宿文化センター大ホールで上演された。日本オペラ界の第一人者で南大東村出身の故粟國安彦氏の長男・粟國淳が演出を手掛け、指揮は星出豊、管弦楽は東京フィルハーモニー交響楽団。
同オペラは、中村氏の作曲・台本作品で、1990年度の文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を受けている。県内では92年に2回、東京では94年、2001年に上演された。
物語は、リゾート開発で揺れる沖縄本島北部のある村を舞台に、過去・未来を自由に行き来するキジムナーを通して、自然と人間の共生や伝統の尊さを問い掛ける。沖縄芝居やうちなーぐちによる演劇要素に加え、三線や笛の沖縄楽器、フルオーケストラ、シンセサイザーと多彩な音楽で表現された。
出演者に県出身者を多く起用。キジムナー「カルカリナ」役に砂川涼子(ソプラノ)、村の御嶽を守るためにリゾート開発に反対するオバア役に森山京子(メッゾ・ソプラノ)、17世紀の村娘マチー役に金城理沙子(ソプラノ)、17世紀の青年ジラー役に照屋篤紀(テノール)。三線は大城貴幸、沖縄笛は入嵩西諭、振付は赤嶺奈津子が担った。
今回、うちなーぐちでのせりふ部分を増やしたと言う粟國は「オキナワンハーフとして特別な思いでこの作品を作った。沖縄に対する気持ちはどこかいつもある。それに対して恥ずかしいものは作りたくなかった」と語った。中村氏と親交が深かった星出は「透さんは亡くなるまで沖縄を愛した。本土の人で沖縄に住んで感じたことをメッセージとして(作品に)残したんだろう」と話した。
92年の沖縄公演でもオバア役を演じた石垣市出身の森山は「初回公演は字面に触発されてその通りにせりふを言っていたが、今回は沖縄の微妙な部分をどう表現するのかを考えた。(開発と自然保護で対立する)沖縄のどちらが正しいというのではなく、それごと受け取るとの思いで演じた」と話した。 (問山栄恵)