小さな工場でも洗濯技術は世界レベル 沖縄イリョーサービスが国際規格を取得 硬水を克服


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
ホテルリネンの仕分け作業をする従業員=本部町浜元の沖縄イリョーサービス

 【本部】クリーニング業の「沖縄イリョーサービス」(本部町、岩田美和社長)は、沖縄県内で初めてリネン業界の国際品質保証規格「RAL(ラル)」を取得した。国内では21件目。本部町内の水は石灰質で硬水のため洗濯に適さないが、3年がかりでハードとソフトの両面を強化して取得を実現した。

 ラルは、商品やサービスの品質について、「消費者の利益となり信頼のある数値指標」を示すことを目的とし、ドイツ連邦経済省が1925年に設立した。取引の際に必要な品質保証規格で、ドイツのリネン業者は三つ星以上のホテルや大手レストランなどとの取引のために取得する。

 沖縄イリョーサービスは、2015年ごろまで医療機関を主な取引先として営業していた。町内の観光需要の高まりとともに、リネン供給にも携わるようになった。社長の岩田氏は、16年にドイツを訪れた際にラルの存在を知り、従業員の意識を高めることも目的として、17年から取得に挑戦した。

 硬質な水を使い続けると、石灰がたまって機械が劣化し、洗濯物にも影響が出る。岩田氏は「本部町の水はかなり硬水で、洗濯ができているのは奇跡に近い」と語る。工程試験や工場監査など、厳しい基準をクリアしなければならないラル取得の道のりは険しかった。

 取得試験では、テスト布を50回繰り返し洗浄し、白さや繊維の状態を確かめる洗濯工程試験に2度合格した後、工場監査に進む。初挑戦の17年は、洗濯工程試験の2回目で軟水器が故障し、不合格に。19年に機械を新調し、ガスボイラーを導入。従業員を対象に工場管理の勉強会などを開き、掃除を小まめにするなど業務を大幅に改善した。20年の2度目の挑戦で全ての基準を満たすことができた。

 38人いる従業員のうち、12人が国家資格の「クリーニング師」を取得するなど、さらなる質の向上に努めている。岩田社長は「町の小さな工場でも、頑張ればできる。目標があると従業員の仕事に対する意識が変わる。地元の企業にこそ挑戦してほしい」と語った。
 (喜屋武研伍)