土地規制新法案 曖昧な規制基準 地価下落、財産権に懸念も


社会
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宜野湾市の真ん中に位置する米軍普天間飛行場

 安全保障上、重要な施設周辺の土地利用の調査や規制を強化する法律が施行されれば、防衛施設が集中する沖縄への影響は大きい。新たな規制措置は、市民による基地監視などの平和運動と経済活動の両面に影響を与えることが予想され、米軍基地や自衛隊などの防衛関係施設と市街地が隣接する場所が多い沖縄の実態を踏まえた慎重な議論が求められる。

 法案は、外国人による土地の取得状況や利用実態の把握が狙いだが、法律上は国籍を問わない。

 政府は電波妨害や航空機の飛行の支障となる構造物の建築といった行為を防ぐことを目的に挙げるが、法案上は「(基地の)機能を阻害する行為(の防止)」と曖昧な表現となっており、規制がエスカレートする可能性がある。

 与党の一部には基地内の航空機の移動といった「基地内の運用実態を見られることも問題だ」として幅広い適用を求める意見がある。だが、基地被害に苦しむ県内では、監視によって住民への影響に関する有益な情報を得ることがある。政府はこのような活動への直接的影響には否定的だが、規制対象が広がる可能性は払拭(ふっしょく)できない。

 一方、調査や用途制限、取引の事前報告義務といった規制措置は、そのイメージや手続きの煩わしさも相まって、地価下落や財産権の制限につながりかねないとの懸念が政府与党内に根強くある。

 米軍嘉手納基地や米軍普天間飛行場など、防衛施設が集中する中部地域は市街地や商業施設の多くが規制範囲に入る可能性がある。

 沖縄経済をけん引する観光業の成長には訪日客の増加が重要で、外国資本による投資は沖縄観光の国際化や魅力向上につながる側面を併せ持つ。新たな規制がもたらすインパクトを丁寧に検討し、経済活動の障害にならないよう法案の見直しが必要だ。

(知念征尚)