<県高校文芸誌コンクール講評> 那覇が総合力で他を圧倒 読者意識し丁寧な誌面 宮城隆尋(山之口貘賞受賞者) 


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最優秀賞に選ばれた「HASH」第22号(前列左から2番目)と各校の文芸誌

 第30回県高校文芸誌コンクールの最優秀賞には、那覇の「HASH」22号が選ばれた。丁寧な誌面作りは毎年安定した評価を得てきたが、今年は作品も韻文、散文ともに水準が高かった。総合力で他の応募作を圧倒し、3連覇を達成した。
 「信仰」をテーマに詩や小説を競作したほか、複数人で取り組む「リレー詩」などを意欲的に企画した。審査員特別賞を受けた山城昌怜さんは小説や短歌、俳句など幅広い分野で読み応えのある作品を掲載した。

 目次の体裁や誌面構成も読み手への配慮があった。部員がわずか4人とは思えない質の高さを示した。

 優秀賞の昭和薬科大付属「梟鸚鵡の想像」5号は短歌に質の高い作品が多かった。自由な発想で詠んでいる。短歌とショートショートを同じ世界観で競作する特集「うたものがたり」も評価が高かった。

 開邦「つぼみ」6号は小説に読み手を引き込む力を持った作品が複数ある。1行ずつ書きつなぐ「詩のリレー」は、偶発性によって言葉の魅力を引き出し合っていた。作者名が伏せられており、詩語を解き放とうとする意思が感じられた。

 首里「胡蝶の夢」15号はQRコードで音声ファイルをダウンロードすると、一部作品の朗読を聞くことができる。しまくとぅばの作品もあり、昨年よりレベルアップした。ほか小説などにもいい作品があった。

 那覇国際「花衣」2号は「失恋同好会」「みんなちがってどうでもいい」などエッセーが魅力的だった。

 糸満「りてらちゃる」17号は小説「フラワー」の発想がユニーク。表紙に美術部の協力を得るなど誌面作りは昨年より向上した。

 小禄「紡言」24号は、小説「銀の猫」など、「銀」を題材に競作した作品に読み応えがある。

 那覇西「蛍」6号は和とじ、カラー写真のカットなど丁寧な誌面作りが評価された。向陽「Puzzle」28号は「サイナ・テンナ・ゴースト」という作品など、小説に目を引くものがあった。

 石川「Libera」の重元かのんさんによる小説「金の切れ目が縁の切れ目」は、不思議な魅力に引き込まれる。多くの審査員から評価が高かった。

 文芸誌の評価基準として作品の水準のほかに、読み手を意識した丁寧な誌面作りがある。部内でノウハウが受け継がれている高校もあるが、質を年々上げているところもある。ほぼ全ての部誌で特集が組まれ、競作で高め合う姿がみられた。一方で審査員から「評論などにも挑戦してほしい」との声もあった。

 この10年間で那覇の最優秀賞は7回を数える。ただ各校の部誌も独自性豊かで高い水準にある。近年の応募校は那覇市近郊に偏りがあるが、今年は石川が健在を示した。本島中北部、離島を含め、県内高校文芸をさらに高め合うコンクールになることを願う。

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