【深掘り】米国識者や元高官ら超党派で「辺野古反対」 バイデン政権、沖縄への影響とは


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 海外基地閉鎖・再編連合(OBRACC)がバイデン米政権に対して出した、米国外の基地の閉鎖を求める公開書簡には、これまで名護市辺野古の新基地建設や沖縄の過重な基地負担に疑問を呈してきた識者や元軍人らが賛同した。その中には、ワシントンに設立されたシンクタンク「クインシー研究所」の代表らも名を連ねる。同シンクタンクは「米国は海外へ軍事介入すべきでない」という「不介入主義」を掲げ、超大物投資家らが設立に関わる。超党派の動きが政権にどの程度の影響力を持つか、今後の動向が注目される。

■戦略的必要性薄い
 

政府が新基地建設を強行する名護市辺野古沿岸部・大浦湾=2020年6月12日(小型無人機で撮影)

 OBRACCの発足を呼び掛けたのは、米国の外交軍事政策や人権問題を研究し、新基地建設を批判してきたアメリカン大のデイビッド・バイン教授。同連合は18年にも海外基地の閉鎖を求める文書を発表した。

 バイン氏は今回の書簡について、「沖縄の人々はあまりにも長い間、米国の基地の影響に苦しんでいる」とし、「多くのOBRACCメンバーは、沖縄の米軍基地を閉鎖し、辺野古の新基地の建設を中止することから始めるのは明らかだと考えている」と語った。

 書簡には、クインシー研究所代表のアンドリュー・バスビッチ氏(元陸軍大佐、ボストン大名誉教授)や、パウエル国務長官(当時)の首席補佐官を務めたローレンス・ウィルカーソン氏も賛同。両氏とも琉球新報のこれまでの取材に対し、沖縄の海兵隊駐留に、正当な戦略上の必要性は薄いと指摘している。

 このほか、これまで沖縄との連帯を示してきた平和活動家らも名を連ね、政治的思想は異なるが、海外の米軍駐留を減らしたいという点で共通の目標を持つ。

■2人の大富豪
 

 クインシー研究所は19年、2人の大富豪の財団の資金を得て誕生した。投資家で慈善家のジョージ・ソロス氏と、米複合企業コーク・インダストリーズの元経営者で大富豪のチャールズ・コーク氏だ。

 ソロス氏はリベラル派の代表格、コーク氏は「小さな政府」を掲げ海外への軍事的介入を嫌うリバタリアン(自由至上主義)で、政治的思想は真逆だ。一方、両氏は軍事力の抑制的な行使と、中東での「恒久戦争」をやめて外交政策を転換すべきという点で一致する。同研究所のサイトは「プログレッシブ(進歩派)と保守派が結集する絶好の機会だ」と説明する。

 10日にはバスビッチ氏を司会に、バイン氏、ケイトー研究所のジョン・グレーザー外交政策研究部長、平和活動家のクリスティーン・アン氏が参加するウェビナーを開催。アン氏は韓国、沖縄、グアム、ハワイの米軍駐留に触れ、市民生活への影響を訴えた。

 バイデン政権は前政権の「米国第一主義」から一転、国際協調を掲げて対中強硬の軍事・外交政策を展開する姿勢だ。ワシントンのシンクタンクも介入主義を肯定する姿勢が多く、対外不介入主義を掲げる同研究所がどの程度、存在感を示すかは未知数だ。だが、強力な資金源で人材を輩出し、米政権にもの申す超党派の動きが強まれば、日本や沖縄への影響も無視できなくなる。

(座波幸代)