辺野古、ハマサンゴ過半数が死滅 夏移植「お墨付き」に疑義 研究者、環境監視委を批判


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辺野古新基地建設に伴い移植したオキナワハマサンゴの生息状況モニタリング調査の様子=2020年2月(沖縄防衛局の資料より)

 【東京】名護市辺野古の新基地建設問題に関連し、防衛省・沖縄防衛局が絶滅危惧種のオキナワハマサンゴの保全策として、夏場の高水温期に移植を実施したことに識者から批判が出ている。サンゴ類は一般的に高水温期の移植は白化のリスクが高いが、防衛局が設置した有識者会議の環境監視等委員会で委員から「案外、夏場でも移植可能」(2018年5月の第15回委員会)などと“お墨付き”を得たことが夏場の移植実施の一因となった。移植された9群体中過半数の5群体の死滅または消失が確認されており、同委員会委員の適格性が改めて疑問視された。

 10日に国会内で行われた沖縄等米軍基地問題議員懇談会にネット中継で参加した大久保奈弥・東京経済大准教授(生物学)が指摘した。

 防衛省は第15回委員会で、委員から「案外、夏場でも移植が可能」だとの了承を受け、18年7月27日~8月4日の間に9群体の移植を実施した。

 防衛省は夏場の移植について、委員会の助言のほか、環境省がまとめた文書でもハマサンゴ類の高水温耐性が「中程度から、やや高い」と記述されているとして、移植の妥当性を重ねて強調した。

 だが大久保氏は、環境省文書は移植せずに元の環境で成育した前提の評価だと指摘。「夏場に移植をしたら、確実にサンゴのストレスとなる」とした。

 議事録では発言者は示されていないものの「同じサンゴの研究者なのかと疑うくらいだ」と述べ、夏場の移植を認めた委員会や防衛局を批判した。

 移植を「成功」としていることも問題視した。19年11月の第22回委員会では、移植したものと、移植先の周囲に生息するオキナワハマサンゴの生存数を比較し、ほぼ同率だったことを成功とした理由の一つとしていた。これに対し大久保氏は、移植の成否を測るためには元々生息していた場所にも一定数のサンゴを残した上で、移植前の場所のものと、移植後のサンゴの生息状況を比較する必要があると指摘した。

 18年夏の移植から「2年半で半数(が死滅)というのは、研究現場から考えてもかなり死亡率が高い」と述べ、委員会の分析や評価手法を重ねて問題視した。