コロナ禍でも「被災地を笑顔に」 沖縄との懸け橋目指す 岩手・大船渡市の新沼さん


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岩手県大船渡市を盛り上げたいとYouTubeにチャンネルを開設した沖縄市出身の新沼玲さん=4日、盛岡市

 コロナ禍でも、被災地に笑顔を―。東日本大震災の津波で甚大な被害を受けた岩手県大船渡市に暮らす新沼玲(あき)さん(45)=旧姓兼城、沖縄市出身=が動画投稿サイト「YouTube」にチャンネルを開設した。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、経営する沖縄料理のキッチンカーの出番が激減。それでも「今できることを頑張りたい」と、沖縄出身者の目線で岩手の魅力を発信している。

 「はいたい、ぐすーよー、ちゅーうがなびら(こんにちは皆さん、ご機嫌いかが)。今日は大船渡のお店の紹介です」。マスク姿の新沼さんが、飲食店に入っていく。動画チャンネル「あ~きぃ~の部屋」の一幕だ。

 夫の出身地の大船渡市に移り住んだのは2010年。震災では自宅は津波被災を免れたものの、変わり果てた街にショックを受けた。「大船渡を盛り上げたい」と考え、復興のための「起業塾」に参加。13年から沖縄料理を提供するキッチンカーを始めた。

 オレンジ色のキッチンカーは、スーパーや商業施設の前などで営業する。徐々に知名度が上がり、さまざまなイベントに出店するようになった。だが、新型コロナウイルスの感染拡大でイベントが相次いで中止に。空いた時間に始めたのが、動画配信だった。

 動画配信は、仲間とも行う。震災後、復興への思いを込めた曲を作るなど音楽活動もしてきた新沼さん。昨年、音楽仲間と共にバンド「JAYS」を結成。バンドには隣の陸前高田市に住み、津波で自宅が流されたメンバーもいる。動画はJAYSでも撮影。「かもめの玉子」で知られ、被災した大船渡市の「さいとう製菓」の本店を紹介する動画などをYouTubeに上げている。

 「とっても人見知りで恥ずかしがり屋だけど、仲良くなるとすごく温かい」大船渡の人たち。新沼さんは「自分は必然的にここに来た」と思うほど、この土地が好きだ。「大船渡と沖縄の懸け橋になりたい」と常々語る。新型コロナが落ち着いたら、多くの人が訪れて魅力を感じてほしい。そう願い、できる限りの力を尽くす。
 (前森智香子)