浦添総合病院の前田移転に反対の声 住民「説明遅すぎる」


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 【浦添】浦添市伊祖の浦添総合病院が、市前田の国家公務員宿舎跡地に移転・新設する。今月下旬にも工事が始まる見通しだ。一部の住民は、国有地取得に欠かせない地元の合意形成が不十分だった点や、施設が7階建てと当初想定された4階よりも高くなることから景観への懸念を示し、建設に反発の声を上げている。 (25面に関連)

 浦添総合病院を運営する仁愛会は7日、住民へ2度目の説明会をアイム・ユニバースてだこホール小ホールで開いた。住民約100人が参加し、報道機関には非公開。仁愛会関係者や参加者によると、仁愛会担当者は「救命救急センターとして命が関わる病院だ」などと説明したという。住民は「説明が遅すぎる」などと意見を伝えた。

 仁愛会が、近隣住民向け説明会を初めて開いたのは2020年9月30日。該当地域の総世帯数に対して約10%の加入率となっている前田自治会への説明に限られており、この時の説明会で自治会以外の住民に初めて概要が知らされた。

 仁愛会は、国家公務員宿舎の廃止が決定した2013年から同地を移転候補地として検討した。16年11月、沖縄総合事務局の国有財産沖縄地方審議会で、仁愛会に随意契約で土地の売却が決まった。売却金額は22億3千万円。

 同審議会で地上4階とされた建物が、説明会で7階になることが判明した。世界遺産の追加登録を目指す浦添グスク(標高142メートル)とワカリジー(為朝岩、同148メートル)を上回る155・3メートルとなる。「グスク、カーや御嶽などの聖地などの地域資源に配慮した配置設計とする」などと定めた、市の景観条例にも抵触する。市も仁愛会へ再検討を促す依頼文を送付したが、条例は高さ制限を数値で示す「定量基準」が定められておらず、法的拘束力はない。

 仁愛会新病院建設推進プロジェクト室の佐竹暁室長は取材に「住民への説明が足りなかったことは反省している。市長からの依頼を真摯(しんし)に受け止めたい」と語った。
 (古川峻)