300万円の未払い年金もらえた 元公務員の配偶者「振替加算」ミス…同様ケースあるかも


社会
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 元公務員の配偶者らを中心に、配偶者間で年金の上乗せ部分を付け替える「振替加算」制度で支給漏れがあった問題を巡り、豊見城市の女性(87)が訴訟を起こさずに、国から未払い分の全額300万円余りを支給された事例があった。事務所で無料の生活相談を受けた瀬長美佐雄県議(共産)が17日、県庁記者クラブで発表し「同じ状況の人はもっといるはずだ」と心当たりのある人に確認をするよう呼び掛けた。瀬長氏によると、県内では初、全国でも3例目とみられる。

 この問題は2017年9月、厚生労働省が公表した。情報システムの不備や事務処理ミスで、91年以降、公務員の配偶者ら約10万6千人に総額約598億円の年金の支給漏れがあり、未払い分が支給された。振替加算は66年4月1日以前生まれの場合、一定の条件で支給される。

 一方、10万人とは別に、「生計維持関係がある」と申告していなかった配偶者ら約4万5千人に対して、国は支給対象外とした。改めて申告すれば時効を適用し、過去5年分のみ支給するとした。ただ、2019~20年、当事者から「国が勝手に判断した」として時効分の支給を求める訴訟が相次いだ。政府は20年5月の国会で、個別事情に応じて「総合的に判断する」と答弁。ケースに応じて窓口で対応する方針に転換した。

 豊見城市の女性は遺族年金などの手続きで瀬長氏の事務所に相談し、20年6月に那覇年金事務所を訪れた際、振替加算が漏れていることを知った。

 年金事務所から直近5年分の請求手続きを案内され、それ以前の請求には「提訴が必要」と説明を受けた。同9月、直近5年分の振替加算が支払われた。同12月、相談に応じた仲山忠克弁護士が年金事務所に同行し、国会答弁した内容が通達されていることを説明した。配偶者との関係を示す戸籍謄本や住民票などの必要書類を提出し、15日に時効分も含めた全額が支給された。問い合わせは瀬長氏の事務所(電話)098(987)0773。


<用語>振替加算

 厚生年金と共済年金のいずれかに20年以上加入していた受給者に、扶養する65歳未満の配偶者や18歳未満の子どもがいる場合、「加給年金」として一定額が上乗せ支給される仕組みがある。配偶者が65歳に達すると、加給年金は終了するが、条件を満たせば、配偶者が受給する基礎年金に加えて、年齢に応じて「振替加算」として上乗せ支給される。振替加算の対象は1926年4月2日~66年4月1日生まれの配偶者。