子どもが生まれたときから始まるのが「抱っこ」。赤ちゃんを適切な姿勢で抱っこ・おんぶするベビーウェアリングを通して子育て支援や普及啓発に奔走する。持ち前の探究心と、人に喜んでほしいと思う気持ちが、自身を活動へと突き動かしている。
いつも人助けしている母親の姿を見て育った。進学した琉球大医学部では臨床検査技師になるための勉強に励んだ。卒業後に上京、東京医科歯科大大学院に入り血液腫瘍を専門に選んだ。修士修了後は、東京大の博士課程に進み、血液腫瘍に加え、免疫についての研究に没頭した。だが、1年間で丸一日休める日がわずか3日というハードな日々に体調を崩した。
27歳で医療品開発を支援する医療品開発業務受託機関(CRO)の会社に就職した。これまで学んできたことが生かせる仕事だった。「楽しくて、やりがいを感じた」。CROの会社を退職後は東京大医学部付属病院臨床研究推進センターに就職。医師が主導する医薬品の治験を支援する。
2016年には長女を出産。1枚の布で抱っこするベビーラップと出合う。「ベビーラップ一つで体がこんなにも楽になることを知った」。
「良さをもっと知ってもらいたい」と、地域の子育て広場で体験会を始めた。だが専門的な知識も必要だと感じ、18年にドイツのベビーウェアリングコンサルティングの先生が開催する講座に参加した。
講座でベビーウェアリングの奥深さに魅了された。赤ちゃんの発達や親子の愛情形成の促進、親の身体的負担の軽減など抱っこやおんぶが親子にさまざまな影響を及ぼすことを知った。
20年5月には、前任者の退任に伴い、日本ベビーウェアリング協会の代表理事に就任した。元研究者らしく科学的根拠に基づいた効果などを発信、普及啓発を行う。「ベビーウェアリングに関する認知度は低い。病院やクリニック、助産師を通じて親たちとつながるようにしていきたいし、虐待防止にもつなげていきたい」と目を輝かせた。
やない・ゆかな 1984年生まれ、那覇市出身。旧姓は仲井真。那覇国際高校卒業。東京大大学院の博士課程で血液腫瘍の研究に携わる。東京大医学部付属病院臨床研究推進センターで働きながら、2020年5月に現職に就任した。