運航再開めど付かず 国際線全便運休から1年 訪日客減、コロナ苦境続く


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利用されていない那覇空港際内連結ターミナルのチェックインカウンター=24日、那覇空港

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う渡航制限により、沖縄発着の海外航空路線が全便運休して24日で1年が経過した。那覇空港国際線ターミナルビルはシャッターが降り、封鎖されたままだ。日本政府が東京五輪で海外からの一般観客受け入れを断念するなど、新型コロナの世界的な流行は依然として収束が見通せない。那覇空港で海外路線が運航再開する時期はめどが付かず、街中では、外国人観光客(インバウンド)でにぎわっていたドラッグストアや免税店などの低迷が続いている。

 県によると沖縄の海外路線は、コロナ前の2020年1月時点では17路線で週204便あった。全便が運休して1年がたつが、今のところ路線の撤退を決めた海外航空会社はない。

 だが、那覇空港旅客ターミナルには18社の海外航空会社が入居していたが、5社がコスト削減などを理由に事務所を撤退している。那覇―ソウルを運行していた韓国の格安航空会社(LCC)イースター航空のように、コロナ禍による航空不況で会社更生手続きを申請した会社もあり、「沖縄路線の再開は厳しいのでは」と指摘する関係者もいいる。

 那覇空港では年々増える海外客に対応するため、19年3月、国際線と国内線のターミナルビルをつないだ「際内連結ターミナルビル」の利用を始めた。CIQ(税関、出入国管理、検疫)の施設増設も20年10月に完了したが、国際線ターミナルの閉鎖が続く中で活用できていない。

 沖縄路線を持つ韓国の航空会社は、日韓関係が悪化した19年8月から減便を続け、その後、コロナ禍に見舞われた。昨年5月ごろから費用削減のため那覇空港内の事務所に人を置かず、本社勤務や子会社に出向させている。

 沖縄支店長は「路線は廃止していないので機会があれば戻りたいが、沖縄はまだ受け入れられる状況ではない。離島も含めて、外国人を受け入れられるような医療体制の整備なども必要だろう」と述べた。

 中華航空(台湾)は20年3月23日の台北―那覇の運航を最後に、旅客便の運休を続けている。コロナ前まで台北、高雄、台中と沖縄を結ぶ路線を週23便運航していた。

 海外旅行の再開を心待ちにしている台湾人は多いといい、今年の元旦に台湾の旅行社が那覇市上空を遊覧飛行する企画を実施し、中華航空が飛行機を飛ばした。中華航空の担当者は「引き続き運航したい気持ちはあるが、今後の計画については何とも言えない」と話した。

 感染症の拡大前、那覇市内ではインバウンド需要を取り込もうとドラッグストアの出店が相次ぎ、国際通りにはいくつも軒を連ねていた。

 那覇市保健所によると、19年12月末時点で、ドラッグストアなど一般用医薬品等の販売店舗は94軒あった。しかし、新型コロナ感染拡大で旅行者が消失したことなどから、20年12月末までの1年間で、約25%に当たる23軒が休廃業を届け出たという。

 店舗の再開などもあり、今月24日時点で80軒が営業しているものの、コロナ前の水準には戻っていない状況だ。

 那覇市国際通り商店街振興組合連合会の石坂彰啓事務局長は「外国人観光客を取り込む政策もあり、インバウンド向けの店舗は増えていたが、(コロナ下で)ドラッグストアなど閉店している店舗も多い。持続可能な観光地としていくためにも、活性化に向けた戦略を練っていかないといけない」と語った。
 (中村優希、池田哲平)