【深掘り】辺野古設計変更、名護市が「意見なし」となった事情


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政府が新基地建設を強行する名護市辺野古沿岸部・大浦湾=2020年6月12日(小型無人機で撮影)

 【名護】名護市辺野古の新基地建設の設計変更申請に伴う県から渡具知武豊名護市長への意見照会が26日、回答期限を迎えた。昨年の市議会12月定例会で作業ヤード用の埋め立てをやめる用途変更に「意義無し」とする市長意見案が否決された後、意見案の再提案があるか注目されたが、結局再提案はなく、3月定例会は25日に閉会した。設計変更に対する知事判断に名護市の意見は反映されないことが決まった。野党側は移設問題に向き合わない市長の姿勢を追及したが、論戦は深まらなかった。

 市議会では野党側が、再提案しない理由をただした。市側は、軟弱地盤などに関わる設計概要変更について意見することの妥当性や、県に寄せられた名護市民らの意見を市長意見に反映させることを検討した。しかし「12月の意見が市長意見との結論に至った」と説明。渡具知市長は「用途変更への意見提出が、法が求める手続きであるという認識に至った」と述べた。

 移設問題に対する市長の姿勢についても繰り返し質問が飛んだ。渡具知市長は「単に賛成反対で割り切れない。市長の立場で強いて賛否ということになれば無用な対立をあおることになりかねない」として、移設問題は市政の最重要課題ではないとの認識を強調。容認でも反対でもなく「県と国の係争を見守る」とする姿勢を繰り返した。

 意見照会で名護市長が設計変更全体に意見することは可能だった。渡具知市長が用途変更にこだわった理由を、市幹部はあくまで法的に求められたのは用途変更の部分だとした上で「移設に対する市長の姿勢で、法が求める以上のことをする理由がなかった。そこに尽きる」と明かした。

 基地建設が生活や環境に与える影響について所在自治体の市長が意見を述べることがないまま工事は進む。野党市議の一人は市長答弁について「『移設に対する私の姿勢で、軟弱地盤に言及することは困難だ』と率直に語った方が、まだ理解できた」とこぼした。

 設計変更申請は今後、名護市の意見はないものとして県の審査が進み、知事が最終判断を行う。市長意見の提出は、渡具知市長が移設問題と向き合って賛否を明確にし議論を深めることも可能だったが、そうはならなかった。

 (岩切美穂)