首里城被災の工芸品364点、修復には20年 管理委が報告書 焼失は391点 


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 沖縄美ら島財団が設置し有識者で構成する「首里城美術工芸品等管理委員会」の高良倉吉委員長は26日、首里城火災で被災した美術工芸品の修復・復元の方針や計画などをまとめた報告書を、同財団の花城良廣理事長に手渡した。火災後に現存が確認できた美術工芸品1119点のうち、修理が必要と判断したのは計364点あり、全体の修理には最短でも約20年はかかる。火災で焼失した絵画「雪中花鳥図」や尚育王の書などを復元する美術工芸品として選定した。

首里城火災の当時、南殿に展示され、かぶったすすを除去した後の漆器「朱緑漆山水楼閣人物箔絵提重」(沖縄美ら島財団提供)
クリーニング前の状態(沖縄美ら島財団提供)

 修理全体に必要な予算額は確定していない。火災前、首里城は美術工芸品1510点を収蔵し、火災で391点が焼失したとみられる。約2億3700万円ある首里城基金を、修理費や修理を担う人材育成などに活用する。予算が不足する場合、さらなる財源確保も模索する。

 報告書は絵画、漆器、染織、書跡、陶磁器、金工品・その他の計6分野ごとの被害や修復・復元の注意点や計画を示した。最も時間を要するのは281点の修理が必要な漆器。既に薄紙をはがす作業やすすの除去など、一部の漆器で修理を進めている。

 同管理委員会の提言を受け同財団は、美術工芸品を保管し、修復や人材育成を担う場も兼ねた独自の収蔵庫を、那覇市内に設置する予定。同委員会は、美術工芸品の管理マニュアルも新たに作成するよう提言した。従来の管理マニュアルは主に学芸員らを対象にしていたが、財団が新たに作成するマニュアルは管理に携わる職員全体を網羅し管理体制の強化を図る方針。