【記者解説】教科書の沖縄戦記述に濃淡 文科省側も関心低下か


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 高校の教科書検定を合格した明成社の「歴史総合」が、慰霊塔である一中健児之塔を功績があったとたたえる「顕彰碑」と紹介した。同社は誤りを認め修正する方向と関係者に伝えているが、文部科学省が誤りに気付かなかったことも問題だ。検定は誤字脱字や図表中の記述までを細かく調べる。単に見落したのか、表現の幅の範囲と認めたのかは明らかではないが、沖縄戦認識の根幹に対する関心が低下しているように映る。

 「歴史総合」は新設される科目であり、教科書の検定は今回が初めてだった。これまでの日本史Aと世界史Aが統合された教科で、沖縄戦に関する各社の記述がどうなるかも注目された。「集団自決」(強制集団死)は軍命を明記するものはなかったが、戦時体制下の教育の影響に触れた教科書もあれば、日本軍に「強要された」と記述した教科書もあった。

 一方、ポツダム宣言受諾までの流れの中で、単に沖縄戦があったことのみを記述する教科書もあった。これでは沖縄戦の実態は分からず、地上戦になると住民に多大な犠牲が出るという教訓を学べない。

 各社の沖縄戦に関する記述に濃淡があり、どの教科書を使用するかで学びに差が出る可能性が高い。格差を埋める手段として、副教材の作成を求める声も高まりそうだ。

 (稲福政俊)