【識者談話】教科書検定、沖縄戦の実相を真逆に記録…被害住民を「戦闘参加者」に 石原昌家・沖国大名誉教授


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 「沖縄県職員や一般住民も加わり、軍官民一体となって激しい戦闘をつづけた」という教科書記述は、大きな意味を持っている。

 沖縄の日本軍司令官、牛島満が1944年8月31日に発した訓示で、住民を戦闘に総動員させることを全軍に命じ、11月18日に県民指導要綱を発令した。「軍官民共生共死の一体化」の方針の下、地上戦闘に臨むことを指示した。

 最後の地上戦となった沖縄戦では、沖縄住民は米軍の砲爆撃だけでなく、軍事機密を守るため投降を許さない日本軍に、直接殺害され、死に追い込まれるという間接的な殺害で、戦争死者が増加した。

 戦後、軍人軍属対象の援護法がゼロ歳児を含む老幼男女に拡大された。それによって、被害住民が戦闘参加者という身分で準軍属扱いされ、遺族に給与金が支給された。死者は国、天皇のために殉国死したとされ、靖国神社に合祀(ごうし)されている。

 まさに、「軍官民一体となって激しい戦闘をつづけた」と、日本政府が沖縄戦の実相を真逆に記録しているのを、踏襲したのがこの教科書記述だ。

 沖縄戦被害者の住民が、「積極的に戦闘協力した」と認定された遺族給与金受給者が355人(19年)に減少している今、沖縄戦体験を真逆に記録している「援護法の呪縛」から自らを解放しないかぎり、「沖縄戦は軍官民一体の戦闘だった」という、ねつ造された教科書記述が継続される。それにより、学校教育を通して南西諸島の軍事化容認の傾向が強まっていくはずだ。

 (平和学)