糸満の戦没者遺骨DNA鑑定 県内初、証言を手掛かりに身元判明


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平和の礎(資料写真)

 厚生労働省が2003年から実施している戦没者遺骨のDNA鑑定を巡り、県内6件目となる遺骨の身元が判明したことが31日、分かった。

 糸満市で収集され、証言を手掛かりに身元が判明した県内初の事例となった。沖縄戦で米軍が沖縄本島に上陸した1945年4月1日から76年。激戦地の糸満市など本島南部の土砂については、名護市辺野古の新基地建設に使う計画の断念を求める声が高まっており、戦没者遺骨が土中に混在する可能性が改めて示された。

 厚労省によると「沖縄戦に出征した軍人さんの証言」を手掛かりに、遺骨と遺族のDNA鑑定を実施した。昨年12月の会議で専門家によって血縁関係があると結論付けられた。

 身元が判明した遺骨について、厚労省は出身地や身分、糸満市内のどこで収集されたかなど詳細な情報については現時点で明らかにしていない。今後、遺族の意向を踏まえて、公表するか検討するという。

 厚労省によるDNA鑑定では、証言を手掛かりにして身元判明につながった事例は県外ではこれまでにもあったが、県内では初という。県内で過去に身元が判明した5件はいずれも県外出身の軍人で、「万年筆」や「印鑑」「認識票」など身元が推定できる遺留品が残されていた。遺骨の収集地は那覇市3件、浦添市と八重瀬町が各1件だった。

 ことし2月末現在、厚労省がDNA鑑定を実施した累計は3595件で、身元が判明し遺族に返還できたのは1190件、2405件は身元が判明しなかった。