【声明文全文】教科書で慰霊碑を「顕彰碑」と表記 元全学徒の会が危機感


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 2022年度4月から使用する「歴史総合」の一部教科書が一中健児之塔を「顕彰碑」などと記していた問題で、沖縄戦に動員された沖縄県内21の師範学校や中等学校の元学徒らでつくる「元学徒の会」の声明は以下の通り。

 2022年度4月から使用する高等学校の必修科目となった「歴史総合」の教科書(明成社出版)に戦没学徒を慰霊し恒久平和を祈念するために建立された「一中健児之塔」を「顕彰碑」とする記述があることを新聞紙上で知りびっくりしました。

 「一中健児之塔」は、慰霊碑であり、決して戦没学徒を顕彰するために建立したのではありません。亡くなった学徒を決して英雄視してはならず、慰霊碑は、戦意高揚のために建立された忠魂碑とも違います。それは、県内21校の旧制師範学校・男女中等学校の各慰霊碑も同様であります。毎年6月23日に開催される慰霊祭も不再戦を誓い恒久平和を祈念するためで、戦没学徒を顕彰するために開催しているのではありません。

 また、「ひめゆり部隊」という表記も事実ではありません。女子学徒は、軍隊に補助要員として動員され、看護に従事したのです。「部隊」とすると独立編成し、軍隊と一緒に戦ったという印象を受けます。「ひめゆり学徒隊」の表記に正すべきであります。

 学業半ばに戦場に駆り出された十代の学徒は、銃弾の中を潜り、狭い壕で蹲(うずくま)り、苦しみながら死んで逝く人を目の当たりにし、人間の死の極限状態を経験しました。「畳の上で足を伸ばし大の字で寝たい」「澄んだ水を飲みたい」「どうせ死ぬなら直撃で痛みなく一思いに死にたい」と、誰しもが念願した事でした。これが、悲惨な沖縄戦の実相なのです。

 戦後76年を目前に沖縄戦の風化が懸念され、元学徒も余命幾ばくか知る由もありません。いかなる戦争であれ、それを美化することは許されることではありません。沖縄戦を生き残った学徒だからこそ、沖縄戦認識の根幹を正していくことを責務と考えています。

 2021年4月1日 元全学徒の会