現行教科書でも「顕彰」記述 沖縄戦の関係ページでは「一丸」「勇戦」の表現も


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 文部科学省の教科書検定に合格した明成社の高校「歴史総合」が、慰霊塔の一中健児之塔(那覇市首里金城町)を「顕彰碑」と紹介していた問題で、同社の現行本の日本史B「最新日本史」(2013~21年度使用)でも「沖縄師範健児之塔」(糸満市摩文仁)の写真を掲載し、「沖縄戦で亡くなった学徒たちを顕彰して建てられた」と説明文を付けていたことが3日までに分かった。現行本は12年3月に検定を合格していた。今回の検定で合格した「歴史総合」は来春から使用される。

明成社の高校日本史B「最新日本史」のコラム「沖縄の学徒隊」。「健児の塔」の写真に「学徒たちを顕彰して建てられた」と説明文を付けている

 現行本はコラム「沖縄の学徒隊」の中で沖縄師範健児之塔の写真を「健児の塔」として掲載した。写真の説明文で「顕彰して建てられた」と記す一方、本文には「沖縄には、戦争の傷跡を伝える戦跡が保存され、数々の慰霊碑が建立されている」と記述した。

 コラム本文は「沖縄県民が一丸となって抗戦し、中学生や女学生も学徒隊として戦列に加わった」「中学生は鉄血勤皇隊や通信隊を編成し(中略)勇戦した」「約千四百名の中学生、約四百名の女学生がその尊い命をささげた」などと記述。本土防衛のための捨て石作戦として多数の住民を根こそぎ動員し国策に協力させたことには触れず、住民が積極的に戦闘に参加したと受け取れる内容となっている。

 コラムでは、ひめゆり学徒についても「女学生はひめゆり部隊や白梅部隊を編成」と説明した。沖縄大学客員教授の新城俊昭さん(琉球・沖縄史教育)は「法的根拠もないまま補助兵力として戦場に動員された女子学徒の編成を『部隊』と称するのは誤りだ」と指摘している。