創作舞踊「若衆鯉」、新作組踊「塩売」 大賞2作の感性輝く 国立劇場企画公演


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
創作舞踊大賞を受賞した「若衆鯉」=3月27日、浦添市の国立劇場おきなわ

 国立劇場おきなわ企画公演「創作舞踊と新作組踊」が3月27日、浦添市の同劇場であった。1部で第9回創作舞踊大賞より、大賞の「若衆鯉」(喜屋武愛香作)をはじめ4作品が踊られた。2部で第1回新作組踊・戯曲大賞の大賞を受賞した「塩売(マシュウヰ)」(伊良波賢弥作、嘉数道彦演出、阿嘉修振り付け、宮良康正・新垣俊道音楽)を上演した。みずみずしい感性の創作作品が、観客に笑顔と感動を届けた。

 「若衆鯉」は、鯉や水を表現した「白鳥節」、月光の美しさをたたえる「玉月」、使命感や舞踊仲間との絆などを表現した「百勇み節」の3曲構成。6人の踊り手が勇壮に舞い、最後は1頭の龍のように一列になり舞った。

 組踊「塩売」は、1771年の明和の大津波に着想を得た。息子を津波で失った父親が見る優しくも切ない一夜の夢を描いた作品。

 父親(東江裕吉)は、放蕩(ほうとう)者の息子を「冨嘉伊島(ふかいじま)」に島流しにする。2年後、島が津波に襲われたため、父親はトゥスヌユー(除夜)に島へ渡り、軒に「回り灯籠」の下がった神司(かんつかさ)(金城美枝子)の家を訪ねて息子の行方を聞く。そこで息子の死を聞かされ嘆き悲しむ父親だったが、年夜の膳を待つ間に見た夢で、「塩売」(上原崇弘)に出会う。塩売は、島に流されてから悔い改めて誠実に日々を送っていた息子だった。

 御冠船踊形式の、およそ4間四方の舞台と、舞台下手後方に橋懸かりを設けた空間で上演した。黒の幕を背景に、幻想的な世界が演出された。

 序盤に神司と引き合わす童子(糸数彰馬)の元気良い唱えが、静かな場面が続く同作に良いアクセントを与えた。東江は舞台の奥に視線を向けることが多く表情が見えにくかったが、唱えの中に喜びや悲しみを感じさせた。神司の長い唱えの間も、居住まいを正した背中から感情をにじませた。上原は新垣俊道がメロディーを作った「塩売の口上」で盛り上げ、終始温かな表情と声音で好演した。

新作組踊「塩売」で、夢で会えた息子(左・上原崇弘)と踊る父親(東江裕吉)

 最後は、歌詞の最後を「橋渡り飛びちぃけ にら底ん舞いちぃけ(橋を渡って飛び立った ニーラスクに舞っていった)」に変えた、「鷲ユンタ」が歌われた。同曲を歌った歌三線の康正と宮良享男をはじめ、新垣、仲村逸夫、箏の池間北斗、笛の入嵩西諭、胡弓の森田夏子、太鼓の宮里和希が地謡を務めた。ほか出演は阿嘉(船頭)。

 作者の伊良波は「イメージに近づくよう嘉数さんが、ぎりぎりまで試行錯誤をしてくれた。そこを難なく乗り越え、舞台で生き生きと演じる出演者の姿を見てすごいと感じた。多くの方に見ていただけてありがたかった。まだまだ勉強することが多くあるが、作品を書き続けていければと思う」と話した。

 創作舞踊大賞奨励賞の「春夜の梅(はるゆぬんみ)」(真境名由佳子作)は、梅の花を手に格調高く古典の世界が表現された。「秘伝仲風」など3曲構成で、地謡と踊り手の呼吸がそろった舞で魅了した。

 ほかに創作舞踊大賞佳作受賞作より、はじちをテーマに娘の初々しさと母の愛情を描いた「初(あら)はじち」(山城亜矢乃作)、沖縄芝居「薬師堂」をモチーフに、乙女の恋心を表現した「籬内(ましうち)」(金城真次作)が踊られた。

(藤村謙吾)