ニューカレドニア コロナ、2度目の外出禁止令 柔軟対応、20日余で解禁 渡航許容地域から感染移入


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マスク姿で外出している家族連れ=ニューカレドニア

 新型コロナウイルスの市中感染が落ち着いた地域と、隔離期間を設けず観光目的などの相互渡航を認める「トラベルバブル」。最近、台湾がパラオと協定を結んだことが話題になった。ニューカレドニアは2020年8月からワリス・フツナ諸島との行き来を行っていた。ところが3月に入り、この地域を旅行したニューカレドニア市民からウイルスが持ち込まれた。

 フィジー諸島とサモア諸島の間にあるこの地域は、フランス本国から一番遠い海外領土で人口は約1万1400人。島民はポリネシア系で、70%が肥満体、20%に糖尿病があり、34%が高血圧という新型コロナと対峙(たいじ)するには最悪のシナリオだった。しかも対応できる医療施設がほとんどないということが明らかになった。

 この環境で放っておくと、どんな惨状になるか分からない。まず、ニューカレドニア赤十字が必要物資を運んだ。72人の医療団と数トンの医療器材を積んだ特別機が、フランスから島に送り込まれた。医療団によるワクチン接種も進み、接種を受ける島民の笑顔がニューカレドニアのニュースで映し出された。

 一方、ニューカレドニアは3月8日から2度目の外出禁止令が出された。生活に必要な商品を販売する店を除いて全ての商店、飲食業が閉店、学校は休校してバスを除く交通網が止まった。外出は1時間だけ、それも許可書が必要だ。去年と違うのは本屋が開店を許可され、マスク着用が義務となったことだ。去年の同じ時期の外出禁止令時には、フランスもニューカレドニアも「マスクは役に立たない。する必要はない」と繰り返していた。メディアはマスクについて説明し、着用方法などを大きく報道した。マスクは今では必要不可欠になっている。

 ニューカレドニアの先住民族議会は、去年の外出禁止令の時から国際線を封鎖している政府に、さらにフランス本国からの憲兵派遣も中止するよう申し出ている。また、先住民族メラネシア人の住む集落の出入りの規制も奨励している。実際、北部の集落では村人がローテーションを組み、集落に出入りする人をチェックしている。植民地時代、ヨーロッパ人が外からもたらした病気が原因で、免疫を持たないメラネシア人の人口が激減した歴史的事実が、より厳しい態度を取らせている。

 政府の対応は前回の外出禁止令より柔軟になり、変化する状況に応じて禁止項目を減らしていった。3週間目に美容室が解禁になり、4週間目に全ての商店が開くようになり、3月30日以降は外出許可書が要らなくなり、事実上ロックダウン(都市封鎖)は終了した。50人以上の集会とディスコは引き続き禁止、4月11日までは外出時のマスク着用が義務となった。

 3月29日の市民への演説で、政府主席と高等弁務長は次のように言った。「現在、市中感染の可能性は非常に低いので、あす30日から外出禁止令は解除します。皆さん、この週末の復活祭は家族と楽しく過ごしてください」。4月11日に復活祭休暇が終わると学校が再開となった。

 (山田由美子ニューカレドニア通信員)