<シネマFOCUS>旅立つ息子へ 息子に注ぐ父親の愛情


この記事を書いた人 Avatar photo 慶田城 七瀬

 自閉症を抱える息子のために人生をささげてきた父親の、子離れの寂しさと喜びを同時に描く。

 妻とも別居し、仕事もセーブしたままの父アロハンは愛する息子ウリと2人暮らし。全寮制の支援施設への入所が息子の幸せと信じる妻に押し切られて入所を決意するも、パニックを起こしたウリを連れてアロハンは逃避行を決意する。

 旅の途中で出会う人たちに助けられながらも突きつけられる現実。永遠に一緒にいることはできないと知りながらも、互いを信じ思い合う2人がただただいとおしい。

 本作の脚本家の父と弟をモデルにした実話という。父親の愛情をただの依存だと責める人もいるが、依存だけではこれほどには愛せまい。

 それでも旅立ちの日は突然にやってくる。息子の成長を心からの喜びとするには、父もまた新たな人生を模索していかなければならない。別れではなく旅立ち。

 息子を見送る父の背中にエールを送らずにはいられない。監督はニル・ベルグマン。

 (スターシアターズ・榮慶子)