<シネマFOCUS>きまじめ部隊のぼんやり戦争 無知がもたらす恐ろしさ


この記事を書いた人 Avatar photo 慶田城 七瀬

 朝9時~夕方5時まで、規則正しく何十年もの間戦争を続けてきた、ある架空の町のお話。

 主人公は、津平町の真面目な兵隊・露木。敵は、川を挟んだ向こう岸の太原町。露木は疑問に思っていた。太原町とはどんな町なのか。どういう人間が住んでいるのか。しかし、伝統を受け継ぐように戦争をしてきた町の人々は、太原町のことどころか戦争をしている理由すら誰も知らない。

 個性たっぷりの役者陣が、機械的に無感情に演じるシュールさに、笑いがこぼれるが、同時に、無表情に戦争を語る彼らの様子は、人間の無意識や無関心や無知がもたらす恐ろしさも感じさせる。知らないものや目に見えないものを怖がることは人間の特質。それは本能的に身を守ることにもつながるが、集団化すると不幸を呼ぶこともある。

 主人公露木は、音楽隊への異動命令を受けたことで、隣町の音へ耳を傾けるきっかけを得る。美しい音を奏でる人がいると知り、その姿を目にし、少しずつ隣町のことを理解し、戦争の不毛さに気づいていく。監督は池田暁。

(桜坂劇場・下地久美子)